ウィステリアと三人の女たち:川上 未映子著のレビューです。
感想:切ない風味が増すほど美しく
足元が不安定、おぼつかない足取りでゆらゆらと歩いていると突如行き先が煙で白くなりパッと消えてしまった。とても抽象的な表現になってしまいましたが、
これがわたしの川上作品のファーストインプレッション。
特に表題作になっている「ウィステリアと三人の女たち」は文体も美しく、川上さんが作り上げたいと思っているであろう世界観が存分に発揮されている雰囲気が感じ取れます。
38歳の主婦が夜中に入り込んだ解体作業中の民家。かつてそこには老女がひとりひっそり暮らしていた。
真夜中の廃墟。彼女はそこで老女の過去の世界を見る。まるでセピア色の映像が目の前に現れたかのような感覚。老女の悲しくもきらめいていた過去の恋愛と生活の場面がふわふわと浮かび上がってくる。
かつて老女は英国人の女性と一緒にこの家で子供たちを集め英語塾を開いていた。パートナーであった英国人女性に恋心を抱く彼女。きらめいていた時も過ぎ、やがて英国人は帰国。それでもすっとずっと気持ちを残したままの老女。手紙のやり取りが唯一の繋がりだったわけだが、それも途絶え・・・。
結ばれない関係、切ない風味が増すほど美しく感じさせられる描写が魅力的だ。そして話はこの家に入り込み老女の過去を知った主婦の元へ戻って来る。彼女のなかで明らかに心境の変化が起こる。あの「音」を聞いたのでしょうか。
どの作品もラストは煙に巻かれてしまうような雰囲気で、なるほどこれは読み手を選ぶ作品群だなぁというのは理解出来ます。
個人的には結末云々よりも、どこか虚ろで、入れそうで入れない世界を持った作品は悪くないなぁと思っています。それもこれも美しい文体であったからこそ受け入れられたのかもしれませんが。
あと、この年代の女性作家に多いなと感じる人間関係描写。直接相手に感情をぶつけるわけではないけれども、心の中にくすぶっている相手へ向ける辛辣な視線はものすごいパンチがある。
同窓会で、デパートで、女子寮で.....そういったくすぶったものが放出されている感情の数々に出合った。
ということで、今後も読んでみたいと思わされましたがレビューは書きにくい。
きっとこの先もレビューを書くのに結構苦労しそうな気がします。
なにせ読んだあとに残るものが儚いというか不確かすぎて心もとないのです。





