穴:ルイス・サッカー著のレビューです。
感想・あらすじ
常に視野にあったのになかなか読まなかった「穴」。読み終わった時にまず感じたのは、「危なかった!読み逃したら、えらい損するとこだった」と、なにか救われた気持ちに。つまりそのくらい夢中にさせられた一冊でした。
少年たちの矯正キャンプ。
悪いことをした青少年が送られてくるこのキャンプでは、彼らに来る日も来る日も穴を掘られせるという作業をさせている。背丈ほどの大きさの穴。劣悪な環境、灼熱の太陽のもと少年たちは掘り続ける。
穴、穴、穴。
前半はうんざりするほど穴と向き合う時間で単調な話になりそうなものの、そこには人間ドラマがあるせいか決して退屈することはない。
そして時間経過とともにこの「穴掘り」はどうやら少年たちを更生させるというのは建前で、なにか裏があるということがじわじわと解って来る。
この付近に埋められたもの、そして主人公スタンリー少年の家族の呪われた過去の話がクロスしながら話が展開するあたり、本当に楽しくて本から離れられませんでした。
やがてスタンリーと仲間のゼロは施設から脱走するのだが、ここからも二人の友情がたまらなく愛おしいのです。
命の危機に晒されながらも、強く生き抜く彼らの姿と互いを思いやる気持ちにどんどん引き込まれてゆく私。
いつか見たスタンドバイミーの雰囲気と音楽が頭の中でリフレイン。絶対にどこかに出口があると祈るようにラストまで突き進んでいった。
どこを取っても面白かった。いろんな話が挿し込まれていくのだけれども、一つずつ無理なく自然に繋がってゆく感じが本当に巧みでした。
登場人物もかなり個性的ですごく憎らしかったり、小ずるかったりするんだけれども、なにか憎めず目が離せない人々が集まっている。
心地よい気持ちに包まれる時間だったなぁと言う読書。年に数回そんな時間が生まれるわけだけど、今回まさにそんな時間が過ごせました。
そしてそんな時間に浸ってたら、あっという間に1週間。書評書くのがすごく遅れてしまい新鮮な感想が書けなくなる。....というのもこういう本に出会った時の傾向である。