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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー・感想】有縁の人:瀬戸内晴美

 

 

有縁の人:瀬戸内晴美著のレビューです。

有縁の人 (新潮文庫)

有縁の人 (新潮文庫)

 

 

感想 有縁の読者の元へ届きますように....と思わされた貴重な一冊です。

 

いわゆる文豪たち。
彼ら彼女らが実存していたのは確かなわけだけど、どこか架空の人々という気持ちもある。子孫の方の話や面影を感じる瞬間があってはじめて「おぉーーやはり存在していたのだなぁ」と実感する。

しかし、瀬戸内さんにとって文豪たちは単なる本の人たちではなく、リアルにお付き合いしてきた人たちなのだ。

さらに作家だけではなく、各界の有名どころとの交流も多く、若い時から本当にすごい環境の中で過ごされていたのだなぁと。

もし自分が瀬戸内さんのような人生だったら・・・なんとも幼稚な想像をめぐらしては、頭をクラクラさせていた。

瀬戸内さんが見たり聞いたりしたものは国宝と言っても過言ではないほど貴重なものであった。

 

 

 

 



とにかく「うわっ」と声が出てしまうような大物登場に驚いては楽しませてくれた本書。特に一つ屋根の下で暮らしていたという谷崎の話は必見!

ふいに夜中に目が覚めた時など、何とも言えない
武者震いのような感動と、興奮が湧いて来た。


瀬戸内さんが谷崎と同じアパートに住んだ数か月の出来事を描いたページは、どこをとっても興奮の渦の中にいる様子が窺え、ついにご対面というシーンまで本当に楽しく読ませていただきました。

「うぉおお!リアル谷崎~~!!知ってるんだ?見たんだ!話したんだ!」と、何度も心の中でつぶやいていた。

三島由紀夫と手紙交換したり、あだ名をつけてもらったりなんてこともリアルにあった出来事。

 

 

 

 


まだ尼僧になってない晴美時代の出来事とは言え、なんとなく不思議に繋がってゆく縁や、人との別れを感じさせられる文面も多い。

瀬戸内さんは時に「おくりびと」のような役割を担う人かと感じさせられる知人たちの最期のシーンの数々。「宿命」という言葉が私の頭の中に浮かぶ。

この本だって過去の人々とわたしたちを「繋ぐ」という大きな役割を果たしてくれている。

川端康成、円地文子、吉行淳之介、平林たい子、遠藤周作、
横尾忠則、小林秀雄、高見順、河野多恵子等々・・・・

まだまだ、まだまだ、有縁の人がたくさん登場します。

黒柳徹子さんの本を読んだ時も思ったけど、長生きするとお別れの機会もそれだけ多くなり、それはそれで本当にしんどいことだろう。

現在、秘書の方と楽しそうに余生を過ごしている瀬戸内さん。こんなにたくさんの著名人と過ごした日々、今はどんな風に振り返っているのでしょうか。

とにもかくにも本書自体も古いものになってしまい、新しい本のなかに埋もれてしまっているけれども、有縁の読者の元へ届きますように....と思わされた貴重な一冊です。