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【レビュー】老乱:久坂部羊

老乱:久坂部羊著のレビューです。

老乱

老乱

 

 

 

◆このような小説に触れておくことはとても大事なことだと思う

 

 

レビー小体型認知症を発症した父親とその家族を描いた小説ではありますが、

実話のようなリアルな内容で、胸のざわつきが止まらなかった。

 

親が、自分が、もしこういう状況に陥ったら・・・

決して他人事ではない身近な問題なだけに心に突き刺さる場面が

数多く登場した。

 

誰のせいでもなく、誰もこうなりたくなってなったわけではなく。

しかし、認知症を発症した本人だけでなく家族もやがて

追い込まれていく様子を見ていると、どうしたら良いのか

いろんな選択肢が浮かんでは消え、その難しさに改めて気づく。

 

一人暮らしをしている父親が徐々に認知症の症状が悪化する。

一緒に住んでいない息子夫婦と遠くに住む娘。

最初はまだ一人で生活できているから大丈夫だろうと思っていたし、

父親本人もそう思っていた。

 

しかし、高齢者の運転での事故や徘徊等で、他人を事故に巻き込むケースが増え

その賠償責任などのニュースを耳にする息子夫婦はだんだん不安になる。

 

そこで父親にまずは運転を止めさせる説得から話は始まる。

いかに傷つけずに説得するかに心を注ぐ息子夫婦。

しかし、そのことを突き付けられた父親は「息子が冷たい」

「馬鹿にしてる」と苛立ちとも寂しさともいえる思いを持つ。

 

まだまだ元気だし頭もしっかりしていると思う父親と、

なんとかしなければと急ぐ子供たちとの温度差がなんとも切ない。

 

父親が書き続ける日記は脳トレも兼ねたもので、

漢字をいくつも書き連ねる訓練をしている。

しかし、時間が経つごとに書ける(思い出せる)漢字の数は減っていき、

いつしか日記すらも書けなくなってくる。

やがて施設にお世話になるのだが・・・・

 

介護する側、される側、本書はどちらの視点も細やかに描いている。

経験のない者にはいくら大変だと聞いていても判らない部分が

ほとんどだ。本を読んだからと言って解決するものでもないし、

不安がなくなるわけではない。

 

しかし、自分に少しでも余裕のある時に、

このような小説に触れておくことはとても大事なことではないかと思う。

 

それが出来るかどうかはまた別の話ではあるが、

本書の家族が選んだ最終的な選択は、家族の在り方の

一番大切な根本的な部分を教えてくれている。