舞台 :西加奈子著のレビューです。
感想:観客ゼロでも立てる大舞台
いやいや、今回も面白い設定で!西さんと言えば、わりと大勢の人々が出てきて、賑やかな会話のやりとりがとても楽しいというイメージがあったのですが、今回は一人の青年にスポットライトを当てて進行する内容になっている。
自意識過剰。ちょっと嫌な言葉。この小説を読んで思い出したのは、又吉さんのつぶやき。
又吉直樹 @matayoshi0 3月9日 メモ帳を開きながら一人で食べているから、お店の方にミシュランの人と疑われていないか不安だ
他人にこんな風に見られているんじゃないか?・・・と考えると止まらなくなる妄想。
自分の中で勝手にシナリオが出来ちゃって妙に身体がぎこちない動きになったり(笑)
大なり小なり、みなさんにも「あ、ちょっと今、自意識過剰だったかも?」って
感じることや、「あの人、自意識過剰じゃん?」ってシーンに遭遇していませんか?
しかし、過剰が過剰すぎると、これはもう本人が一番つらいだろう。
─────ということを本書で目の当たりにしました。
主人公・葉太、29歳。父の遺産を手にした彼は、初めての一人旅ニューヨークへ。しかし、自意識過剰が酷すぎて、事態は日に日に悪くなって行くという話。え?なんで自意識過剰で、そんな大ごとに?って思うかも知れませんがいやいや、本当に大変なんです。これが。
確かに旅行に行くと、ちょっといつもと違うテンションではしゃいだり、調子に乗ってしまうことがある。でも葉太はそんな自分にならぬようスマートな自分を演じる。
セントラルパークでかばんを盗まれた非常事態においても葉太は周りの目を気にして、「なんてことないさ」という雰囲気を周りにまき散らし自分を演じるのだ。なにせ、はしゃいだあげくの馬鹿な観光客に見られるのが恥ずかしいから、決して人に助けを求めない。
もーなにもそこまで!なんて面倒で滑稽な人なんだろうと、思ってしまうんだけど、100パーセント笑えるかというと決して笑えないなぁ自分・・・という気持ちもあり複雑な気分。
「ニューヨークすぎる!」そうなんだ。どこを見渡しても本物のニューヨーク。
テレビで見ていた場所にいざ立ってみると、途端にスポットライトが自分に当たった気分になるものだ。「まぶしすぎるぜ。ニューヨーク!」というこそばゆい感覚。
ただの観光客のひとりなのに、あえて地元民が行くスーパーに通ってみたり、朝市に出かけてみて、ニューヨーカーっぽく歩きながらドリンク飲んじゃったり。立派に調子に乗っている自分の姿が蘇る。(書いているだけでなんだか恥ずかしいぞ!)
だから、葉太ほどではないけど、なんとなく共感できちゃった自分がちょっと怖いような恥ずかしいような指摘されたような・・・。身体の隅のほうでチクチクした厄介な痛さがあった。
笑ったり、おぃおぃと言ってみたり、嫌だけど共感しちゃったりと、相変わらず西さんの作品は忙し楽しい。
Tシャツに書かれた文字の意味や、時々登場する幽霊とか、小ネタのセンスもいちいち楽しくって、見逃すまいという気持ちで読んでしまう。
そして、この面白さをまたもや伝える術を持たない私はダラダラ書いてしまうといういつもの書評・・・すみません、西さん。
さて、この青年、無事に日本に帰れるのだろうか?そして、自意識から解放される日は訪れるのだろうか?ラストはいつもの作品よりしっとりした終わり方。また新しい西さんの世界を発見したような作品でした。
さぁ、貴方もこの本を読んで、自分のなかにある「自意識過剰っぷり」と向き合ってみませんか?結構イタイの覚悟の上でね。





