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【レビュー】十二単衣を着た悪魔 :内館牧子

 

 

十二単衣を着た悪魔 :内館牧子著のレビューです。

十二単衣を着た悪魔

十二単衣を着た悪魔

 

 

視点をズラして読む源氏の世界もかなり面白い

 

 

面白かったです!

源氏物語で「印象的な人物は?好きな人物は?」と問われた時、
まず思い浮かぶのは光源氏を含め、彼と恋におちた姫たちの誰かと
答えるのが自然だとは思うのです。

 

しかし、内館さんにとっては、誰よりも誰よりも好きだったと言う人物は
弘徽殿女御(光源氏の父:桐壷帝の正妻)というわけで、この本は弘徽殿女御
コードで読む「源氏物語」になっているのです。

 

内館さんは紫式部が彼女のことをあまり取り上げてないという
不満があったのでしょう。

 

この本では弘徽殿女御という人物に、ここぞとばかりにスポットをあて、
今までと一味違った彼女の魅力を披露。


トゲトゲしく意地悪なだけの女性ではなかったのだなぁー
と感じずにはいられません。

 

内容は源氏物語の話に忠実に進んで行きますが、京大医学部に現役合格した
弟「水」をもつ、就職浪人で常に弟に対してコンプレックスがある「雷」が、
ひょんなことからあの煌びやかな源氏の世界で生活するはめになるのです。

 

彼がどういった役どころで、今の世界と比べながら生きていき、
変化していく過程も、もうひとつの見どころであります。

 

もし自分が今、源氏の世界へほうり込まれたら…と想像すると
きっとこんな心境になるのだろうなぁーなんて思いながら読めるので
かなり楽しいです。


今まで読んで来た源氏の世界。この世界の中心を少しズラして読むと
こうも内容が別の意味で面白くなるとは!
源氏物語がいかに奥深くまた、登場人物ひとりひとりに的を絞って
話を作っていくと、幾通りもの解釈が可能になることが解ります。

 

もし源氏物語に初めて触れるのがこの本という方にとっては、
原作の登場人物たちの印象と全く違った世界から入ることに
なるのだろうなぁーと思う。

 

「弘徽殿女御さんの活躍すごいじゃん、子供想いの、頭のいい人でしょ?
格好いいよねー」って。

 

ちなみに私は朧月夜が好きですが「セクシーで激しく、芸能界と男と化粧しか
関心のないような女…」とバッサリやられていました。嗚呼…内館さ~~~ん

 

弘徽殿女御がずっと脇役で不満だった内館さんは、「プラダを着た悪魔」を観て、
メリル・ストリープが演じた辣腕キャリアウーマンと、この弘徽殿女御が突然
重なったそうです。

そして「弘徽殿女御は十二単を着た悪魔なんだわ」と。
そこがきっかけで、弘徽殿女御コードで読む小説が出来上がったという。
まぁ、ちょっと強引なタイトルではありますが…。

 

女の意地悪な部分にスパイスをさらに加える感じで書くのが本当に巧い内館さん。
弘徽殿女御への思い入れの強さがもの凄く伝わってくる一冊でした。

 

最後にラテン系男こと光源氏は弘徽殿女御に対してどんな感情を持っていたのか?
まさか恋しちゃってた?ってことはないですよね?意外な本心が見えてきます。
続きは小説でご覧になってくださいませ。