大いなる幻影・猟人日記:戸川昌子著のレビューです。
感想・あらすじ 自分と関わった人がどんどん死んでいく!?
シャンソン歌手の戸川昌子さんが小説を書いていたことを知りませんでした。芸能人という印象が強かったわけですが、本書を読んで小説家なんだな~と見方が一気に変わりました。
本書は「大いなる幻影」と「猟人日記」の2編。どちらも入り組んだ人間関係とその人々まつわるあれこれがとにかく濃ゆいです。
男子禁制のアパートで暮らす老嬢たちの話である「大いなる幻影」目当てで借りて来たのですが、それよりもむしろ「猟人日記」の方が好奇心を掻き立てられました。
もちろん「大いなる幻影」の老嬢たちの話も不気味で面白かったのですが、なにせ登場する婆さんの数が多くって手に負えず(笑)
ということで書評は「猟人日記」に絞ります。
「猟人日記」とはある男のいわゆるナンパ日記なのです。獲物はそうです、女性なのです!けしからん!(笑)しかもこの男には妻がいるのですが、仕事という理由で単身で東京に住んでいて、関西の家にはほとんど帰っていない。
そんな自由な生活の中で、男は夜な夜な町へ繰り出し、ナンパをし、数々の女性たちとアバンチュールを楽しんでいた。その夜の出来事を「猟人日記」に記す。
さてさて、そんな男と遊んでいた女が殺害される。自分にはアリバイがある、その時一緒にいた別の女が証明しくれるだろうと女の家に行くと、その女も殺されていて....と、自分と関係を持った女性が次々と死んでいく異常事態へと発展。結局、男は何もしていないのに、捕まってしまう。
そこで「猟人日記」の存在がクローズアップされる。様々な角度から捜査を試みるが、なかなか真相が見えてこない。一体、だれが何のためにこんな不気味な事件を繰り返すのか....。
怖いですよねぇ・・・自分と関わった人がどんどん死んでいく状況。その裏には想像もできないほど強力な力が動いていたわけですが。
RhマイナスAB型ってドラマでも流行った?血液型が登場したり、女性の職業にタイピストとあったり、時代背景が色濃く漂う作品でもあった。
ジワジワと来るサスペンス。普段あまり読まないのですが、「火サス」っぽくってなかなか席を立てない的な面白さがありました。
戸川昌子について
昭和8(1933)年東京生まれ。高校卒業後、大手商社で英文タイピストとして勤務。そののちアテネ・フランセでフランス語を学び、シャンソン歌手となる。ステージの合間に書いた『大いなる幻影』で昭和37年、江戸川乱歩賞を受賞、歌手から作家への転身というので華やかに喧伝された。以後『猟人日記』『夢魔』『蜃気楼の帯』など異常性愛から国際謀略まで巾広く描き、人気作家となる。結婚、出産を機に創作は中断したが、現在も自身の店でシャンソンを歌う健在ぶり。(Amazonより)