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【レビュー】骨肉の倫理:石川達三

 

骨肉の倫理:石川達三著のレビューです。

骨肉の倫理 (角川文庫)

骨肉の倫理 (角川文庫)

 

 

 

 お金と言う吸引力、恐るべし。

 石川達三作品は2冊目の読書ですが地味に面白い。何がってそれはもう人間の腹黒い部分が包み隠さず描かれているので、ちょっとドロッとしたものを読みたくなったら「よろしく、達三!」と馴れ馴れしくお願いしたい方となっています(笑)

 

ということで、「骨肉」なんて言葉がつくあたりから、「倫理」ではなく「争い」が繰り広げられるのだな・・・という期待は裏切られることなく、本書はまだ生きている親の財産をいかに有利に自分たちのものにするか、個々の目論見をいやらしく描いていく。

 

登場する人々のお金に対するあさましさは、それはそれは酷いもので、家族ならではの情とか譲り合いとか、そんな言葉はどこにも見当たらず、とにかく「お金」のことしか

考えていない人々。言い換えれば「お金」というものにはすごい吸引力があるという
ことが解る。

 

さて、その家族構成は?
伊之助は妻に先立たれ隠居生活の身。
彼には4人の子供がいる。長女・悦子、長男・道也、
次男・万次郎、不義の子・千加子だ。

 

伊之助には半ば内縁の妻がいる。
また、姉である本庄たみ子と盗癖のあるその孫が彼と同居中。離れには道也家族がが住んでおり、妻も夫を加担しながら自分たちが有利になるようあれこれ考えを巡らせている。

 

まぁとにかくどの人も打算的で自分のことしか考えてない。
老いた父親を思いやるなんてことはない。


唯一伊之助を献身的に支えていたのは妾であった。彼女は冷静に伊之助の子供たちのことを観察しているが賢いので口出しをするようなことはしない。

 

しかし、ほかの人々があまりにもえげつないので、妾が伊之助に良くすれば良くするほど、「何かあるのでは?」という疑いの眼を向けたくなるのは登場人物たちだけでなく
読者にも思わせる。このあたりの演出が実に上手い。皆が皆、とにかく一銭たりとも自分の財布を痛めたくない。

 

道也の家で若くして病気で亡くなった千加子。
自分の家に亡骸があると、葬式等、自分たちで行わなければならない、すなわち、費用も負担させられると判断した長男夫婦は、廊下の雨戸を一枚外して、伊之助が留守のうちに遺体を母屋に運ぶという行動を起こす。身内のひとりが亡くなったというのにこの有様。ドン引き状態が止まりません。

 

さて、父親である伊之助は子供たちの企みに気づいているのだろうか?

 

伊之助の子供たちは生前に財産を分配してもらおうとあれやこれやと策を練るのだが、親は子が思うほど単純ではなかったことに気づかされる。

 

成人した子供が3人もいるにもかかわらず、全く頼りにならないと感じていた老父の虚しさが伝わってくる同時に、伊之助が以前から考えていた算段に胸がスカッとする。
果たして伊之助が最後に起こした行動とは!?

 

んーとにかくみんな黒すぎる(笑)「なに言ってんだよ」と、言いたくなるほど

各々が勝手なことばかりで、イライラするのだけど、これが人間の本質でもあるのだと思うと、なんだか滑稽にすら思える。

 

大金持ちの相続より、少額の相続の方がかえって争いが大きくなると聞いたことがあるが、この話は父親の財産がどのくらいあるのかもまだ分からない、しかも父親がまだ健在であるうちに人々が右往左往する姿がまるで喜劇であるかのように映る。

 

とかなんとか言いながら、この一家の財産の行方が気になり、なかなか本を閉じることが出来ず寝不足。わたしも相当悪趣味な人間である。(苦笑)

 

 

 

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