午後の音楽 :小池真理子著のレビューです。
感想・あらすじ メールが奏でる恋愛小説。カタルシス効果でどんどん深まって行く二人の恋の行方は…
小池さんの作品を読むときは、ちょっと気合いを入れないとな…という自分なりのパターンみたいなものがあったのですが、この本はすごくライトな感覚で最後まで読めてしまったので「あれれ…もっとドロドロした感じはないの?」と、別の意味で期待を裏切られた1冊でした。
それもこれも、この作品は、メールのやり取りのみの形で話が進行するからでしょう。
まぁ、ありがち?と考える場面も多いのですが、気持ちがどんどんお互い高揚していく様子は、なんだかんだ目が離せず、やがてこの手紙のやり取りが「輪唱」のように、気持ち良いリズムに変化して行きます。デートした日の出来事なども、全てメールの内容で読者は知ることになります。
「明日、会いましょう」というメールの次は「楽しかったです」といった風に全てメールに書いてあることで知るのです。
だから、メールはとてつもなく長いものもあり、少し違和感もありました。
そして、他人のメールを盗み見てる妙な気分にも…。
メールのやり取りって、確実に相性がありますよね。この二人のどちらかがメール無精だったり、話題にズレがあったり、上手く行間の読めない相手であったら、決して関係が成り立たなかった世界。
実際問題、ここまで長文メールをマメに書く男性っているのかな?って思うんですがね。これも恋がなせるわざなのか?
自分の話に共感してもらい、感情をさらけ出せる相手が居るということは幸せなことで、そんな全てを受け入れてくれる相手が現れたら、やはり離れがたくなりますよね。
この話もお互い誰にも話せなかった過去の封印してた部分を晒すことによって、距離を縮めて行くのです。
さて、この二人の関係。実は主人公の女性は、義理の弟とこのメールのやり取りをして恋に落ちるのです。
女性の方は離婚していますが、男性にはこの女性の妹という妻が居るのです。きっかけは、ごくごく平凡なことからです。
さぁ、この二人は最終的に大人の選択ができたのでしょうか…。想いをぶつけ合うメールでの絡み合い…肉体関係よりある意味濃かったなぁ。
嗚呼、艶のある文章能力があれば……
自分の能天気なメール履歴を見て、こんな世界と程遠いことを思い知ったのである。