商人道「江戸しぐさ」の知恵袋:越川禮子著のレビューです。
謙虚な生き方を江戸の人から学ぶ
例えば人ごみの中、他人に「足」を踏まれたら…
ん~私だったら間違えなく、キッとなり、相手がちゃんと謝るまでなんらかアピールしちゃうだろうな。
この本を読んで、あー自分って下品だなって心から思ったのだ。
【うかつあやまり】
これは踏んだ方はもちろん、踏まれた方も
「こちらこそ、うっかりいたしまして」と謝る。
「うかつ」さを詫びる謙譲は人間同士が暮らす上でトゲトゲしさをなくす知恵。
【傘かしげ】
雨のしずくがかからないように、傘をかしげ合って気くばりして往来する様。
本書はこのような「江戸のしぐさ」のたとえ話がたくさん出て来る。
これは下手な新人研修よりよほどためになる本とでも言おうか。この時代が簡単に行き来できるなら、自分も含め、社内研修として全員参加してもいいほどじゃないかなと思う。
新人は学ぶ上での素直さを、上司は人の上に立つという実践哲学を…。
この時代から吸収できるものは相当あると思う。
そして、これらの基本はすべて「思いやり」で成り立っていることを。
この「江戸のしぐさ」は世界でも洗練され美しいと評価も高かったそうだ。
筆者は「江戸のしぐさは形を教えるのではなく心を教えるのです。人は地位や財産などと関係なく等しい存在であり、一瞬の出会いも大切にすることが必要だ」と言っている。
江戸の人々はチャキチャキしていて、勢いがいいだけではなかった。
思ったよりずっと奥ゆかしく、謙虚な生き方をしていた。
スポーツでしばし負けた側に拍手を送るシーンを目にし、胸が熱くなったことがあると思うのですが、「江戸のしぐさは」はそんな社会。負け戦、つまり敗者にエールや声援を送るイキがあるということ。
「イキ」って漠然と解ってる気がしていたが、こんな感じのことかぁーと初めてしっくり来る例話を聞いた。
現在エコなどで江戸時代の風習に目を向ける機会も多くなったが、今より精神面で個々が自立し、成熟した社会であったこの時代から見習うべき点がたくさんあることにもっと目を向けたいところである。
というわけで、明日から少しは見習うか…。
「うっかりいたしまして」
「そうだな」
なんて会話になった時には、やっぱりキィーっとなりそうですが(笑)
こういうことも乗り越え、すっかり癖になってはじめて習得したことになるらしいです。やぁー、江戸は噛めば噛むほど味が出てきますなぁ…。