東電OL殺人事件 :佐野 眞一著のレビューです。
どこをとっても不幸な事件に言葉が見つからず…。
この話は平成9年に起きた事件についての真相を追った内容です。
桐野夏生さんの「グロテスク」(この事件にもとに書かれた小説)を読み、そして、映画「恋の罪」が公開されたあたりから、なぜかとても気になり出し、詳しい内容を知りたいなぁーと思っていましたが、なかなかこういった本を読むというところにまで辿りつけなかっただけにこの本を見つけたときには、ちょっと感動しました。
仕事に追われて家に居る時間が極端に少なかったからか?私はこんなに騒がれ、奇異な事件であったのに印象に残っていないというなんとも間抜けな状態。当時、どんな報道がされていたのか、今頃、気になっています。
改めてこの事件の奇妙さに触れ、読みながら何度も「実話なんだよね?」って自問自答してしまいました。事件に関係のある場所や店なども知っている所だったりしたので読んでいて明確に風景まで浮かび上がり、なんとも複雑な心境でした。
作者は被告人の故郷、ネパールまで足を伸ばし取材をしています。被告人の生い立ち、生活環境や人柄などからして、あり得ないのでは?と読みながら混乱することもしばしば。
膨大なる証言や捜査を持っても、確実なものが何一つ解らない。読めば読むほど謎が深まって行きます。
殺されたこのエリートOL。毎晩、歩道に立って一心不乱に男性を誘っていたその向こうに見えていた景色はどんなものだったのでしょうか。
何故そこまでしなければならなかったのか?
家族との確執など様々な説がありましたが、どうなのでしょうか。
殺伐とした想いが残るばかりです。
それにしても、日本の警察は優秀だとよく聞きますが、未だこんな手荒いやり方で取調べをしていのか?といった部分などもありなんだかなぁ…。
最後に、この事件の最新情報を探していたらありました。東京高検が独自に実施した物証27点からは個人を特定できるDNA型は検出されなかったと発表した。(2012年4月23日)