通天閣:西加奈子著のレビューです。
「阿波踊り」したくなっちゃうようなリアルな面白さは一体どこから来るのだろうか。
西加奈子さんの頭の中を覗いてみたくなる。
この小説を読んでいて、何度そう思ったことか。
正直、この小説の内容は平凡なんです。
普通の人々が、普通の生活の中で日々怒ったり、嘆いたり、落ち込んだり。
しかし、西さんの手にかかると、それらの人物たちが面白いくらい熱を持ち、人格がくっきり現れてくる。
若い女性から、中年男性やオカマまで、なんでこんなにもリアルに描けるのか疑問すら持ってしまうほどうまいのだ。
「日立」のネオンが、赤く光っている。
あの光が灯ると、ああそろそろ出勤せな、と思うねん。
舞台は大阪ミナミの町。
その界隈で繰り広げられる普通の人々の普通の日々。
場末のスナックで働く失恋した女性や、懐中電灯「ライト兄弟」を作る工場で働く男性や、立ちんぼをするおっさんのオカマなど、細かい細かい人物設定がされていて、徐々に各々のバックグラウンドや個性が見え始める。
おおごとじゃないけど、ちょっとした出来事から生まれるドロンとした感情や、「ちっ」と舌打ちをしたくなるような感情を撒き散らかしながら、後半はグッと話が面白くなる。
いつもそうなのだけど、西さんの面白さをなかなかうまく伝えられない。
この「阿波踊り」したくなっちゃうようなリアルな面白さは一体どこから来るのだろうか。
世間には小さい西さんがあちこちにはびこっていて、サッとある人の脳の中やポケットに入り込んで、こっそり観察しているんじゃないかとさえ思えてくる。
そうじゃなきゃ、あんなにも巧みに幅広い層の人々の、ちっちゃいちっちゃい部分までは描けない。
お腹が鳴った。
馬鹿らしい。こんなときにでも、お腹は減るのだ。のんきな胃袋よ。
誰かに振られた日だって日常はこんなもの。
そして、毎日を生きるのではなく「こなす」なのだ。
そんなささやかな人々とラストにクローズアップされる通天閣。
そうそう、心温まる結末もちゃんとあるんだな。





