盆まねき:富安陽子著のレビューです。
◆お盆を疑似体験して来ました!
私は両親も東京育ちなので、休みを田舎で過ごすという行事がなかった。
だから帰省のニュースを見ると「混雑して大変だな」と思う反面、
ちょっとした毎年恒例のお祭り騒ぎに参加できる人々がちょっぴり
羨ましい…と、今でも思います。
そんな「田舎なし」の私ですが、田舎で過ごすこの話に一気に夢中になり、
───お盆やすみ中!しばらく声をかけないでください───
というプレートを背中に貼っておきたいくらい、この空気感が良くって
他の世界をちょっと遮断したくなる気持ちで読んでいました。
なっちゃんという少女が毎年夏に行く笛吹山のおじいちゃんと
おばあちゃんのおうち。
たくさんのいとこや親戚のおじさん、おばさんが集まって来るお盆。
子供にとっては、いとこたちと遊んだり、駄菓子屋に行ったり、
盆踊りに参加したり、楽しい娯楽が毎日待っています。
この話はそんな田舎で過ごす8月12日から8月15日までの話です。
各章、おじいさん、おばちゃん、大ばあちゃんの話で構成され、
昔にあったちょっと不思議なお話が織り込まれています。
かっぱが出てきたり、月のうさぎの話があったり、
─────「これはおじいちゃんのほら話だよね?」
と、動揺を薄めるためにこんな言葉が頭の中で繰り返されます。
そんな話を興味深く聴いたなっちゃん自身も不思議な体験をします。
特に「盆踊りの夜」のなっちゃんの見たものは、とても幻想的です。
この話は「お盆」というものが一体どういったもので、
何故必要なのか、故人への供養をしっかり子供たちに
伝えていることも忘れません。
そして本書の最後には「もうひとつの物語」が用意されています。
「みんなが忘れたとき、その人は二度目の死を迎える。」
グッーーと胸が詰まるようなこの話に、お盆の「真の意味」を
さらに教えられた気がしました。
いとこの年長さんたちとの関わりや、親戚でもちょっと苦手な人が居たり、
ああ、そういうことってあったなぁ~なんてノスタルジックな気分も
味わえてしまうこの物語はむしろ大人になってからの方が楽しく
読めるものかもしれません。
もうすこしここに居たい。でもまた来年にね。
そんな田舎で過ごした数日を、疑似体験させてもらった気がします。
uzumaki-guruguru.hatenablog.com
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