紫式部日記 :紫式部のレビューです。
紫式部日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)
- 作者: 紫式部,山本淳子
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2009/04/25
- メディア: 文庫
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紫式部の原動力はここにあり…と、あらためて感じる日記です。
ざっくりとこのシリーズで、古典の日記の読み比べをはじめています。今回は第2弾「紫式部日記」です。
紫式部が、藤原道長の娘、中宮彰子に仕えた時の回想録で、華やかな宮中での生活の裏で、なかなか溶け込めない彼女の複雑な心理がよく描かれた日記です。
本書を読んで「紫式部って思っていたより暗いな」といった印象が残った。
もっと思ったことをズバズバ言い、テキパキしている女性というイメージがあったのですが、初出仕で周囲にうちとけてもらえなかったという理由で、半年くらい仕事を休み、家に引きこもってしまうというくらい、かなりナイーブな女性であったようです。
それから徐々に慣れてはいくものの、常に人間関係に悩んでいたようです。が、そんな鬱々した気持ちこそが紫式部の原動力。鋭い洞察力はこの生活を確実に肥やしにした賜物であり、あそこまでの「大作」が作れたのだと思います。その鋭さは女房たちやライバル清少納言に向けられ冷静に批評しています。
また、中宮彰子の出産や、豪華な祝い事の数々などの様子は、まさに紫式部の得意とする内容で「源氏物語」を彷彿させらる臨場感があり、読者を夢中にさせるものがこの日記にもあります。
しかし、華やかな場面と対照的なのが彼女の内面。それもこれも、夫が結婚後たった3年で亡くなってしまったという悲しみからなかなか脱け出せずに居るもの悲しさが終始文面から漂ってきます。
女房になることによって周囲も変わり、当然、昔の友とも話が合わなくなり、寝起きをともにする同僚こそが友と言える等、環境の変化とともに人間関係も変化してゆきます。
このあたりは、ちょっと現代人の私たちにも共通する部分があります。学生時代の友達より、日々一緒に働いている同僚の方が次第に話が合うようになる…なんて過程ってありますよね。遥か昔も、そんな感じがあったのか…と思うと時代を超えた共通点が意外にもあるものだなぁと感じます。
人の心は移ろいやすいもの、
身の上が変わればそれに従って、
新しい現実になじむもの
現実と向かい合いながら、彼女自身も成長していくのです。この日記の構成は、統一性があまりないので、前半と後半では雰囲気が違います。
前半は彰子の出産前から翌年正月三日まで。その後、手紙文体になったり、断片的なエピソードになったりと、コロコロ構成が変化するあたりが面白いと言えば面白いです。
日記自体からは、特に際立つものは感じられなかったのですが、なんと言っても「源氏物語」の作者が一体どんなことを日々考え過ごしていたのかが知れることが素晴らしいです。
コンパクトに全体像が把握できますので、入門書としておさえておくと良いと思います。




