作家のごちそう帖: 悪食・鯨飲・甘食・粗食 : 大本泉著のレビューです。
「疲れた。一ついのちでも喰うかな」
病気がちで食が細い。昔の作家と言えば、そんなイメージが強かったのですが、
こういう種類の本を読むたびに、物書きには食いしん坊が多いなぁということを毎度感じさせられる。
ひとところで動かず書く生活を続けていると自ずと食べることが楽しみなるということは理解できる。
本書はそんなグルメな作家たちの「食いしん坊万歳!」的な楽しい一冊。当時の作家たちのお気に入りの食べ物がたくさん出てくるのはもちろん、食にまつわるエピソードやレシピなどコンパクトに紹介されている。
例えば、正岡子規は私のイメージから随分と違ったナンバーワン。「横顔しか知らないけど?」という乏しい脳内判断でしかしないのですが、がっつり食べるタイプではないな・・・なんて思っていたら大間違い。この方、結構な大食漢であったそう。
デザートのフルーツなんかは「大きな梨ならば六つか七つ、樽柿ならば七つか八つ。
蜜柑ならば十五か二十くらい食うのが常習であった」
って、あなた!顔が黄色くなっちゃうわよ!ちなみに子規の食べ物の記録のようなものがあったのですが、菓子パンとかの絵も添えられその書きっぷりがちょっとした女子の手帳のような感じで思わず「女子カヨ!」と呟いてしまった。
その他、ちょっと驚いたのは森鴎外の「饅頭のお茶漬け」なんてのもあった。もうこうなるとグルメなんだか分かりませんが面白いものです。そしていつも何かしら笑かしてくれる我らおっちゃんこと谷崎潤一郎氏。グルメなおっちゃんの食の話は大好きなのですが、今回も楽しすぎ。
いい大人なのに、人数の多いすき焼きの時に、「ここは僕の領分、旗を立てておきますよ」と、自分の箸で突きながら示したそう。もーーー止めなさいって!!
自分は「旗」とか言っちゃってるくせに、家族には食べる作法も厳しいし、夕食なんかは日中の服から着替えて化粧も直してからなんて面倒くさいルールを強いていたという有名な話も。まぁ、そのくらい一食一食、大事にしていたということは解りますが、おっちゃん、面倒だわ!
さて、本書で一番印象に残った言葉を取り上げて終わりにする。
「疲れた。一ついのちでも喰うかな」
誰の言葉か想像できますか?これは岡本かの子の言葉です。なんかカッコイイ!
かつて読んだ「鮨」を思い出す。この言葉、今度鮨を食べに行く前に是非使ってみたいと思った(笑)





