アメリカーナ: チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著のレビューです。
再び巡り合うであろうふたりの足跡を追いかけて
【本が好き!の献本書評です】
人種問題のピリッとした内容と、恋愛模様のほろ苦さが相まって非常に雰囲気のある小説となっている「アメリカーナ」。小説がまだ途中であるにも関わらず、本を閉じるたびになにかしらの余韻に浸るという状況が来る日も来る日も続いていたように思える。
・・・長かったです。でも終わりを迎えるのもなんだか無性に淋しくて残ページ数がわずかになった時から早くもホームシック状態。ということで、私、かなりのめり込みました(笑)
学生時代、恋に落ちたイフェメルとオビンゼ。ふたりは将来を約束し、イフェメルはアメリカへ、オビンゼはアメリカ留学を断念せざるを得ない状況になってしまいイギリスへ向かうことに。
ナイジェリアからスタートする話はアメリカ、イギリスと舞台を切り替えながら進み、各々の日々を綴る。離れ離れになった恋人たちの行方は後半までちょこっとお預け。
二人を待っていたのは今まで経験のなかった人種や階級などが明確にある社会。人種問題は経験しないとなかなか実感として伝わりにくい部分ではありますが、アディーチェは特に女性ならではの視点で取り上げている。
些細なことが積み重なり、それが「人種」という縛りを作り、いかに人々を苦しめ、いかにフラストレーションを膨らまして行くものになるかということが手に取るように感じられる場面の数々。
黒人女性が持つ髪に対する強い想いや、ファッション雑誌モデルの黒人女性と白人女性の比率など、アディーチェが描く人種問題は「身近なところで常に起こっているのだ」ということを実感させられる。
また、ミシェル・オバマさんを登場させ考察するあたりは我々にも非常に解りやすい形でイメージができる。こういった描き方が実に巧みなのです。
人種に関わる話はいつでも複雑なわけだが、イフェメル自身は渡米して初めて自分が黒人なのだと知ることになる。そんなイフェメルが訪れた美容室の場面は特に印象的だった。たった数時間ではあったが、そこでの会話の数々はアメリカで暮らす上での人種に関するリアルな現状がたくさん詰まっているように思えた。
一方、オビンゼもイギリスでままならない生活に追われる。二人の関係は、やがて連絡も途絶えてしまう。ドラマチックな恋愛模様は、イフェメルがナイジェリアに戻りオビンゼと再会したことによって大きく動き始める。「そうそう、そう来なくっちゃ!」と、まるで私自身が彼女の友人のような気持ちでどんどん前のめりになってしまう。
しかし急速に再び距離を縮めてゆく二人の姿にドキドキしながらも、オビンゼが既婚者ということが頭から離れない。一体、この二人はどこへ向かうのか固唾を呑んで文字を追う時間となり・・・。
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毎年心の奥底に静かに残るような作品が1冊でもあると万々歳と思って読書を続けていますが、今年はもう出会っちゃったかな?と思っている。そんな手ごたえのあった作品でありました。
余談になりますが、著者さんのブログでも紹介していただいた経緯のある高山マミ氏の「ブラック・カルチャー観察日記 黒人と家族になってわかったこと」こちらのノンフィクション本で知った様々なことを思い出すような場面に「アメリカーナ」でたくさん出会いました。
まったく違う本であるのに、懐かしくなったり本と本が結びつてゆくあたり、読書の醍醐味だなぁ・・・と感じさせられたのも今回の読書で楽しかったことの一つでした。





