娘役:中山可穂著のレビューです。
宝塚とヤクザの世界が合わさって・・・
まだ見ぬ世界、宝塚。
同著者の「男役」を読んでヅカファンがどうしてあんなにも熱狂しているのかということが解ったつもりでいたけれど、今回「娘役」を読んで、宝塚という舞台裏にはまだまだ底知れぬ世界が広がっている・・・ということを思い知った。
とは言え、今回は冒頭からちょっと様子が違う。
一気に宝塚の世界に行けると思ったら、なんとヤクザものか?と思わされるほど裏社会の話から始まる。
年老いたヤクザである大鰐を殺そうとしていた主人公の片桐。
大鰐のあとを付けていくとそこは宝塚。
なんでヤクザがこんなところに?
そう、大鰐は宝塚の熱狂的なファンだったのだ。
片桐はとにかく大鰐を殺すことに神経を注いでいたにもかかわらず、たった一度の会話から大鰐の圧倒的な存在感魅了されてしまう。そしてたまたま目にした宝塚の華やかな舞台と、舞台から片桐の元へ飛んできた一足の靴。これが彼の未来を大きく変えるものとなった。
今回はねぇ・・・男役と娘役に関する内容もとてもよかったのですが、意外にもわたしはこの大鰐と片桐の関係性にホロリとさせられることが多かった。
もちろんメンタル的にも超超男前である男役の振る舞いや言動に何度も「こりゃ、惚れてしまうやろ?」と、ドキドキさせられるシーンにときめく気持ちを抑えきれなくなりそうでしたが、男同士の太い絆を感じさせられるヤクザ話にも「こっちはこっちで惚れてしまうやろ?」というクールな関係性に思わず吠えてしまう。
新人公演でヒロインに抜擢され若手娘役・野火ほたる。
男役・薔薇木涼。
ほたるの成長を静かに見守る孤独なヤクザ片桐。
本作品に登場する人々は本当に魅力的。
たった10年間の出来事を綴った話ではあるけれど、彼らはとても濃厚な時間を私たちに見せてくれた。ラストも散ってゆく感じで・・・。
夢の舞台から裏の稼業へ、光の世界から闇の世界へ、行ったり来たりしながら人々の人生が絡み合う。
100%フィクションであると中山さんはおっしゃいますが、たとえ妄想とはいえ、とても上手くふたつの世界が融合されていて完成度が高い作品になっていると思います。任侠もの+宝塚。最初はどうなるのかと不安だったけれども。
「男役」は幻想的な雰囲気でしたが、「娘役」はより現実味が感じられ、個人的にはこちらのほうが好みでした。というか、宝塚の舞台を見ずにヅカファンになってしもうた(笑)なんちゃってヅカファン、お仲間募集中!
さて、中山さんは第三弾を書きたいそうですが、出版できるかどうかはこの小説の売り上げ次第とのこと。祈るような気持ちで第三弾待っています。今度は何役なんだろう??
uzumaki-guruguru.hatenablog.com