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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】リボン:小川糸

 

 

リボン:小川糸著のレビューです。

リボン (一般書)

リボン (一般書)

 

 

宝物は、一緒に過ごした時間のすべて

 

 オカメインコの話の小説が発売されるということで、とても楽しみにしていた1冊。とはいえ、私自身、オカメインコと十数年過ごしていた経験、そして、その愛鳥を失った辛さを考えると、最後まで読み切れるかちょっと不安でした。

 

もう随分前の別れだったのに、いまだに夢の中に出て来るオカメインコ。ペットロスが激しく、それから動物は一切飼えなくなってしまったのですが、どこかであの優しい触れ合いの出来るペットと、またあんな時間が持てたら良いな―と思っています。

 

・・・という経緯があったので、特にこの小説の前半部分、少女とおばあさんが卵をかえすところから育てるシーンは、懐かしいというか、完全にデジャブ現象でした。

 

「あーそうそう、こんな風に育てたなぁ。」とか、「こんな表情するんだよなぁ…」とか。ちょうど、この少女、ひばりちゃんと私も同じくらいの歳だった。

 

だから学校帰りにランドセルの中の音を感じながら、ハコベの葉を摘んで、かけって家に帰った姿も全く同じ。幼かった自分の姿を再現しているかのような感じでした。

 

「リボン」は1羽のオカメインコの物語。

このリボンはお婆さんの「すみれちゃん」のおだんご頭の中で卵の時期を過ごします。やがて、産まれて来て3人の穏やかで楽しい時間を過ごすのですが、ある日、リボンは籠を抜け出し、空に消えていってしまった。

 

リボンは様々な人々のもとへ現れ、ふんわりし癒して、温かい気持ちにさせては、また次の場所へ飛んで行く。

 

ずっとこの少女の心の中にいた「リボン」。

 

どんな最終シーンが用意されているのか…。私自身もずっと気になりながら読み続けました。

 

宝物は、一緒に過ごした時間のすべて。

本書のこの言葉にどれだけ感銘したことか…。もう会えない自分のオカメインコの姿が思わず浮かび、確かに私の中で「一緒に過ごした時間」こそが、大人になった今でも宝物になっていることに気づく。この物語は私の長年の気持ちにも癒しの効果があったわけです。

 

ということで、オカメインコへの思い入れの強すぎる私の読み方は、おそらく他の人とまた違った感情が加わってしまい、あまり参考にならないと思いますが、ペットを飼った人なら響く部分はきっと同じだと思います。

 

人と人を繋ぎ幸せを運んでくれるこの小さな黄色いオカメから、ふんわりした優しい時間をもらいました。

 

欲を言えば、もう少しお婆さんと少女とリボンの部分に厚みが欲しかったかな…。
むしろ、それだけのストーリーでも十分だという気もしないでもない。