続 明暗:水村美苗著のレビューです。
感想・あらすじ 漱石の「明暗」に決着を!?
夏目漱石の「明暗」を読んだ多くの読者はこの本が未完ということもあり、ちょっとした置いてけぼり感や消化不良を起こしたまま本を閉じたことだろう。
かくゆう私も「長々ともったいつけやがって!」と読後にプリプリしていたわけだが、(いや、分かっていて読んだのですが、なぜかイラついていたw)そもそも漱石の「明暗」を読んだのも、水村さんの本作を読みたかったからであった。
というわけで「明暗」で漱石疲れをしたわたしは、ちょっと時間を置き年内に決着を!とようやく本作に着手した次第です。
さて最初の頁を開き目に飛び込んできたのは「百八十八」という数字。
続編感がムンムンと漂う読書になんだか感動を抑えきれない(笑)
津田が妻のお延に嘘をつき、元彼女である清子がいる温泉地に会いに行き、その後どうなったのか?清子はなぜ津田を捨てたのか?等、読者が気になっているであろう部分に焦点当てその様子を丁寧に描いてゆく。
どうなるのかなぁ・・・ともっさり進むあたりや、登場人物の性格の引き出し方など、不自然な部分を感じさせられることもさほどなく、こんな話であってもちっともおかしくないと思わせてくれるあたり流石だと思います。
「明暗」で即寝状態に陥っていた時とは雲泥の差。
読み易さから今回はほぼ一気読みでした。
さて、明暗なる人々のその後ですが・・・やはりキーパーソンは「吉川夫人」でしょうか。みんなを掻き乱す存在として元気にその役割を発揮しています。
温泉地では津田と清子と同宿のカップルというニューフェイスも加わりちょっとした新鮮味も。
最終的にはお延をはじめ朝鮮行き間近の小林や、津田の妹の秀子も温泉地にやって来て話は山場を迎える。津田はこの修羅場を乗り越えられるのか?
しかしまぁこの津田という男。やっぱり潔さがなくて嫌だな。そもそも結婚したばかりなのに前に付き合っていた女性になんで捨てられたのか知りたい一心で訊ねに行くこと自体「ん~もぅっ!」って感じなのですが、お延に言い訳する姿も本当に醜いのです。
もうこうなったらお延ちゃんはこんな男と別れてしまいなさい。そして、津田と吉川夫人、お付き合いなさいと、脳内で黒々としたカップリングをしてしまった私であります。
とにもかくにも、いろんな意味で手こずった作品ではありましたが、年内に一応の決着が!?
「続明暗」を読むうちに、
それが漱石であろうとなかろうとどうでもよくなってしまう。
そこまで読者を持っていく。
これが水村さんが小説を書くうえにおいての至上命令であったという。
読み終わった今、この意味がすごく解ります。「明暗」を読んで悶々とされた方は読んでみる価値はあると思います。
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