お父さん、牛になる:晴居彗星著のレビューです。
んもーーー!お父さん、なんで牛になっちゃったの?
「かなり面白いです」
これだけ言って、書評を終わりにしたい気分だったりします。
「おとうさんが牛になった」
ただそれだけの話なんですけどね。
私的にはすごい「ツボ」だらけで何度声が出たか…。
そして、何度、胸がジーンと来て目が潤んだことか。
たった数時間でこれほどの笑いと、心がキュンと締め付けられるような切ない気分になるというアップダウンの激しい話はここ最近なかったかも。
面白い部分は本当に面白く、会話自体がもう漫画を読んでいるような感覚。
ウザいウザ川さんが、失神するあたりがピークだったなぁ。
もともとこの家族のお父さんは、子供たちや奥さんからも相手にされていなかった。
どこの家庭でも大なり小なりあるような光景ですが、一歩、外に出た時のお父さんの存在って一体どんな感じなのだろうか?
意外にも家族の知らない顔があったり、趣味があったりするのかもしれないですよね。
今まで知らなかったお父さんのことが、家族にだんだんと解って来る。
人から聞いたり、思い出したりしながらお父さんのことを考え始める。
こんなこともお父さんが牛にならなかったらきっとこの家族は考えなかったよね。
そして子供も奥さんも、お父さんが家族に注いでいた愛情の大きさに気がつき、徐々にお父さんに対する気持ちに変化が起こり始めます。
お婆さんが登場するあたりから、この家族はいったいどうなってしまうのだろうか?と、ページをめくる指が急加速した。
…ということで、ただただ面白いというだけではなく、深い部分で「大事なこと」が隠されている話なんだということを、読者もジワジワ感じずにはいられない話です。
ンモーー!とにかく、面白かったことは確かです。
お父さんは牛の鳴き声でしか反応しません。
会話の返事は、しぐさや「モ―」という鳴き声のみ。
しかし、「モ―」のバリエーションは凄い!注目してみてください。
世のお父さんたちは読むと動揺するかも?
奥様、お子さんたちは、お父さんが疎ましく感じたら是非読んでみてください。
実際、お父さんが牛になっちゃたら、どうします?
そんなことにならぬよう、ちょっとだけ大事にしてあげましょう。(笑)
作者の名前は洒落なんですかね?
…と、隅々までなんだか面白いなぁと、最後にもう一度、表紙を見ながらニヤリとした私です。