ロスト・トレイン:中村弦著のレビューです。
旅の目的は十人十色。駅の見方がちょっと変わりそうな不思議な世界へ
「日本のどこかに、誰も知らない廃線跡がある。
それを最初から最後までたどると、ある奇跡が起こる」
廃線や廃墟など、マニアでその地を訪れる人が結構多いと聞きます。…なんて言っている私も学生時代に廃病院の前を夜のドライブがてら、わざわざ通過するなんてこともしていましたが…。
この小説を読み始めた時、あまりにも導入が自然な感じだったので、てっきり作者の体験談なのか?と思ってしまいました。
内容は…
奥多摩の廃線跡を訪ねた牧村は、鉄道マニアで親子ほど年の離れた平間と出会い、偶然、お互いが吉祥寺に住んでいることがわかり呑み友になる。
行きつけの飲み屋で、平間から『まぼろしの廃線』の話を聞くことに。やがて、平間は行方不明になり、牧村はその行方を追って、彼の知り合いを訪ね歩き、一人の女性と出会う。その女性と「まぼろしの廃線」であろう場所を訪ねる。そこで一体どんなことが起きたのか…。
と、あらすじを大雑把に書いたが、ミステリからファンタジー、ちょこっと恋愛といったジャンルはよくわからないけど、気付いたら一気読みだったという「読ませる力」が
この作家にはありました。
登場人物が個性的でもなく、内容的にも派手さはないけど、文章も読みやすく、自分の中でしっかり映像化できた小説であった。
鉄道ファンにはもちろん、旅行好きな人にも十分そそられる内容。同じ旅行と言っても、目的が違うと、旅の在り方がこうも違うのかと終始感心。
鉄道もきっと読書と同じ。コレを知ったら、次はコレ。と数珠つなぎにあちこち見て周りたくなるのでしょうね。
人生の「乗り換え駅」について、ハッと考えさせられるラスト。
この部分がどんな感じなのか特に注目してきました。
…この話のような不思議な場所を探しに、いつかは「なんちゃって鉄子の旅」でもしてみたいなーと、しみじみ思ったのである。
そうそう、駅の伝言板。チョークで書くあれです。この小説で久しぶり思い出しました。色々な書き込みがあって読むのが楽しかった記憶があります。いつの間にか消えてしまったもののひとつ。本の中から「あの頃」を手繰り寄せるのも、なかなか良い時間でした。
この装丁、癒されます。
映画の「スタンドバイミー」の音楽が聞こえてきそう~~♪