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【レビュー】ハイ・ライズ: J・G・バラード

ハイ・ライズ: J・G・バラード著のレビューです。

ハイ・ライズ (創元SF文庫)

ハイ・ライズ (創元SF文庫)

 

 

マンションの扉を開ける・・・それは悪夢のはじまりだった

(本が好き!の献本書評です)

 

日本でも増えつつある高層マンションを舞台にした小説。
ロンドンの中心に聳え立つマンションには1000戸2000人が生活をしているという。

 

40階の建物にはスーパー、銀行、レストラン、プールやジム、そして小学校に至るまであらゆる施設を備え持つ。

 

話はこのマンションの住民である医師のラングが、バルコニーに座り、犬を食べながら過去三か月に起こった異常事態を顧みるというシーンから始まる。

 

ん?犬を・・・・
という、引っ掛かりをとりあえずスルーして先へ進む。

 

さて、一見何不自由なく生活出来そうなマンション。
しかしある晩の停電をきっかけにマンションの内部は崩壊の一途をたどることになる。

 

一体なぜこんなことに?このマンションは10階までの下層部、35階までの中層部、その上の上層部といった具合に階級分けされている。様々な面で優遇されている上層部と、そうでない下層部。上層・下層、その間にある溝に溜まった不満が爆発し、そして・・・・。

 

ストーリーは建物荒廃のプロセスを描いているとでも言おうか。
ページを追うごとに状況は見る見る劣悪になり、目を覆いたくなったり、鼻をつまみたくなったりと底なしの沼に足を踏み入れてしまったような後悔が襲う。

 

ベランダは上から物が降って来る、壁に落書きがされ、ゴミや汚物があふれ出し、エレベーターは機能しなくなり・・・

 

不思議なのは誰一人として、外部に助けを求めないこと。
助けどころか自分たちの興味の対象はこの建物の内へ内へと向かっていく。

 

また、こんな状況なのに毎晩パーティーをしているなど、住民の精神もちょっとしたトランス状態なのでは?と思わされるほど奇妙な興奮状態にあるのだ。

 

中盤あたりから同じようなシーンが続き、進展しない状況にイライラしつつも、この状況をどんな形で終結させるのだろうか?という興味のみで終盤へ向かう。

 

ん~、個人的には最後まで馴染めずといった感じです。
暴力や乱交、殺人がいとも簡単に描かれてしまうあたりがどうも解せない。と、言ってしまったら元も子もないのだけれども、こういう作品に出合うと疑問符ばかりが残ってしまい自分のなかでグズグズしてしまう。

 

自分の財産でもある家を、自らの手によって滅茶苦茶にしてしまうなんてことはなかなか起こり得ない。なんて愚かなことを・・・と、ついつい現実的なことを考えてしまう。とは言え馴染めなかったというだけで、面白くなかったわけではない。この作品の持つ独特な閉塞感はちょっと他では味わえない。

 

また、英国ならではの階級社会の風刺作品と捉えることもでき、なかなか奥深い面もあるわけで。映画になっているそうですが、確かに映像向けであるように思える。

 

困ったことに、本書を読んでからタワーマンションを見るともしかしたらここも・・・?とよからぬことを妄想してしまう。小説に染まりやすい読者はご注意を(笑)