私はフーイー 沖縄怪談短篇集:恒川光太郎著のレビューです。
感想:甦っても…甦っても…
やはり、夏はこんな感じの本が良いですね!
「沖縄怪談短篇集」と明記されている表紙に早くもソワソワ。
以前、沖縄出身の同僚に、「沖縄のお墓はこっちのとちょっと違う」ということを聞き、検索してあれこれ画像を見たのですが、今回、そのシーンが頭の中にチラついちゃって。
あれから、なんとなく沖縄の独自な文化や風習が気になっていました。
なので、最初から怖い話を読むというより、ちょっと知らない世界に自ら飛び込んで行ったような…そんな感覚で読みはじめました。
本書は怪談なのですが、どちらかと言うと、不思議な空間や神秘的な人々に吸い込まれていくような空気感が全編を通して漂っています。
現世の人なのか、それとも自分の知らない世界の人なのか?
様々な幻想的なシーンに出会うたびに足を止めてしまう。
特に印象に残った話は、
「沖縄そば」を出すお店で働く女性は、実は娼婦。
ある日、ふらっと訪れた男性客。
女に誘われるまま、関係をもってしまった男。
そこから悲劇が始まるのだが…。 ─────「夜中のパーラー」
この話はなんだか目の前で見ているような臨場感がありました。
闇のなかでポツンと営業している店の風景がいつまでも心に残ったなぁ。
思い切り沖縄の島ならではの世界に連れて行かれのは
「弥勒節」や、表題作の「私はフーイー」。
怖いというより、昔から伝わる説明のつかない不思議さがどこまでも追って来ます。
生まれ変わってもなお、前世から逃れられない何か…。
なかなか興味深い世界です。
島のムードがひしひしと感じられる神秘的な作品が読者に余韻を持たせたままにして幕が閉じます。
というわけで、不思議世界にどっぷり浸れ、かなりご満悦です。
やっぱり島にまつわる独特な雰囲気をもった話は面白いなぁ。