戦争とおはぎとグリンピース :西日本新聞社のレビューです。
600字という短い話から見えてくる敗戦後の女性たちの姿、日本の姿
本書は 西日本新聞社で60年以上も続く女性投稿欄「赤皿」から
誕生した一冊。敗戦後の女性たちの悲喜こもごもが綴られる。
600字という制限があるので、どの話も短いのですが、
それが逆に「戦争」という痛みをくっきりと浮かび上がらせ、
読む人の心に痛いほど響てくる。
敗戦9年後の日本。
全体を通して感じたのは、家族一緒に食卓を囲めるという幸せを
あらためて感じる人々の姿がなによりも印象的であった。
まだまだ豊かな食生活ではなかったけれども、自分が作った料理を
子供たちに食べさせられる喜びを噛みしめる女性たちの姿。
逆に、戦死した息子に好物だったおはぎを存分に食べさせて
あげられなかったことが何年たってもこみあげてくるという母親。
南方から帰国船が戻ってくるたびに、おはぎを胸に抱えてかけつけては、
また持ち帰るという日々を過ごす。この話からは無念とやるせなさが
胸を突く。
子を先に亡くしてしまった親の寂寥感。
残された者が抱える悲しみ。
どんなに時間が流れても、遺族の心の中には
あの頃の子供の姿が生き続けている。
女性たち42の話は十人十色ですが、
多くの女性たちは文章の締めくくりに「平和」への願いを訴えている。
もう二度と自分たちが通った道をたどらなくてすむように・・・と。
そんなたくさんの願いを胸に刻みながら読み終えました。