「罪と罰」を読まない:岸本佐知子,三浦しをん,吉田篤弘,吉田浩美著のレビューです。
内容はタイトル通りかの有名なドストエフスキーの「罪と罰」を
未読のメンバーとともに、どんな小説であるのか推察してゆくという
無謀極まりない試み。
メンバーは岸本佐知子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美。
これはパンチのきいた内容になりそう!とくに、しをんさんが
どう暴れてくれるか(笑)
「罪と罰」かぁ・・・
実は私も未読の身。
未読の本について語る本を未読の読者が読む。
この奇妙な構図にちょっとげんなり(笑)
一体どうなることやら・・・・。
結果は・・・・
やはや、こういう読書の楽しみ方もありなんだなーと
ほんとにほんとに新鮮な驚きと発見の連続でした。
なにせみなさんの推理が面白すぎて、読みたい気持ちが
10%・・・20%・・・50%・・・80%・・・と頭の中のメーターが
どんどん上がって行き、ついに堪え切れず途中で「罪と罰」の
上巻を買いに走りましたもん。
作家さんゆえ、かなりの推察力、想像力だなぁと感心させられる一方、
登場人物の名前が覚えきれなくて適当な名前で呼んだりするあたりは
自分と変わらずとても親近感が持てました。
最終的には妄想の勢い余って松岡修造や愛之助を登場人物に
見立ててしまうあたりそれはもう。
なぜにロシア文学に修造がいるんだーーー
本当の名前そっちのけで「修造がさぁー」とか言っているし、
ラスコ(主人公の名前の略)とドストエフスキーを合わせて「ドスコ」
と呼んでみたり、そのなんでもありな感じは、とても名作の話を
しているとは思えない。
これがいいんですよね~敷居がどんどん低くなってゆく感じで。
「罪と罰」を並行して読んでゆくつもりでいたけれど、
結局、私はこの4人の話があまりに面白くて止められなくなってまった。
なので本編は第一部で早々に終了。
というのも、本書後半に第一部からエピローグまでの
あらすじが載っているのです。そして読後座談会へと移行するので、
是非とも全篇を知っておきたいとここでも堪え切れずあらすじを
全部読んじゃいました(笑)
もうカンニングしちゃったような気分ですよ。
とにかく、この読後座談会は便秘が解消したような放出感がたまりません。
ある意味答え合わせのようなものですが、皆さん推理していたときと違い
喜々として語っていらっしゃる。あの人が良かった、あいつは嫌いなど、
人物像がはっきりした分、突っ込みどころも厳しくなり、これがまた面白くって!
人はいろんな想像を巡らせながら活字を追っているものなんだなー
ということを、ひしひしと実感する場面も多かったです。
しをんさんの妄想や突っ込みどころはやっぱり好きだななぁ。
さて、読んでいない本の内容をどう推察をしたのか?
推察する手がかりや進行具合など、いい塩梅で構成されていたなーと思います。
一人一人の役割分担もお見事。
ぜひ、本書にてそのあたりも堪能してください。
私のように読んでいない者でもちゃんと理解できるようになっています。
というか、むしろ興味が漲ってしまいますが・・・。
さて、私はすっかり「罪と罰」を読んだ気になってしまいましたが、
これからが本番です。うんと敷居が低くなったので、軽やかに
本の中に入っていけそうな気がしています。
未読でも既読でもこの本は面白く読めると思う。
読書意欲を高めたり、読書する楽しみ方を存分に示してくれた
このような企画は、読書離れが叫ばれている今だからこそ、
大変意義があるものではないだろうか。