娘の結婚:小路幸也著のレビューです。
感想・あらすじ
「お父さん、会ってほしい人がいるの」 ─────そのとき貴方は?
「娘はやらん!」なんて、卓袱台をひっくり返すシーンをついついイメージしてしまったわけですが、そんなシーンはなかった(笑)
「娘の結婚」という言葉を耳にすると、どうしても「父親」の哀愁漂う黄昏時の背中が思い浮かぶのはなんでかなぁ。母親ではないんですよねぇ。
本書も娘の結婚について、あれこれ考える父親の姿を描いた作品で、なかなか娘の結婚相手に会わないというよくあるパターンです。
しかし、娘の結婚相手に不満があるというわけではなく、そこにはある理由が…。
17年前に事故で亡くなった妻と折り合いが悪かったご近所の夫人の息子と娘が結婚するということで、父親としてその真相を事前に知っておこうとする。
どんな結婚も姑が曲者だと、苦労が目に見えているわけで、そんなところへ嫁に行かせていいものか、親として心配ですものね。
男手ひとつで育てた娘なだけに、なんとか幸せになってもらいたいという思いも強く、そんな様子がひしひしと伝わってくる。また、父のことを気遣う娘の様子も、これがなかなか良いのです。
とにかく読みやすかった。
問題をクリアしながら、少しずつ話が展開していくのも爽快で、登場人物も協力的な良い人たちが多く、嫌みのない小説に仕上がっています。
スルスル~~と読めてしまうので、あっさり終わってしまったという気もしますが、これ、同年代の娘さんをもつ世のお父さんが読んだら、かなり泣けるのではないかと思う。
─────「お父さん、会ってほしい人がいるの」
お嬢さんの居るお父さん、こんな日が訪れる準備はできていますか?
この本を読んで、少しだけ免疫をつけておく?
文庫本