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【感想・あらすじ・レビュー】甘いお菓子は食べません:田中兆子

 

 

 甘いお菓子は食べません:田中兆子著のレビューです。

甘いお菓子は食べません (新潮文庫)

甘いお菓子は食べません (新潮文庫)

 

 

感想・あらすじ

 

おもしろいタイトルだったので、コメディタッチの小説なんだろうなぁと思っていたら、女性達の切実な悩みが次々と投入され、結構な追い詰められ感を味あわせてもらいました。

 

どの話も「ギリギリなところ」を彷徨い、出口を模索する女性達。

 

そのサンプルを次々と見ているような内容からは、心に突き刺さってくるシーンもあれば、「そこまで思いつめるものだろうか?」と自問自答させられるような話まで、30~40代の女性達の悩みは多岐に渡る。

 

 

 

 

気軽に読めたのは、

「結婚について私たちが語ること、語らないこと」。

キャディーをしている結婚適齢期をとうに過ぎた独身女性たちの話。3人の女性の女子会トークがリアルで楽しいのはもちろん、私的にはキャディーさんの世界が少し覗けて面白かった。女の職場というだけあって、こまごまとした上下関係も大変そうだ。また、同じ独身同士でも神経を使う結婚の話題。各々の微妙なさじ加減が妙にリアル。

 

そうかと言えば、何気ない会話の中の赤裸々感も。このメリハリある感じが現場で聞いているような臨場感があり堪りません。

 

「熊沢亜理紗、公園でへらべったくなってみました」

これは、タイトルからして興味をそそられます。50歳で職を失った女性が、公園で「へらべったくなる」という結構ヘビーな話なのです。そこへ来て「へらべったくなる」とは??親もなく、配偶者もなく、リストラされた女性の行方はどこへ向かうのか....。

 

逆に重たいテーマのものも。

突然に夫から「もうセックスをしたくない」と言われ、途方に暮れた主婦の話や、重度のアルコール依存症の女性の話など、R-18文学賞大賞受賞作というだけあって「生と性」が蠢き合う。

 

 

 

 

6編全て読み応えがありました。どの話も甘くない。

 

こうして見ていると立場は違えど、この年代の女性達って本当に複雑な感情の中で生きているものだなぁと感じる。1編読むごとに、喉がカラカラになってしまうような気分でした。

 

ここを乗り越えると一皮むけて、自分と向き合うことも楽になるのかも?と、60-70代をエンジョイしているご婦人たちを見て思うのであった。

余談ですが、表紙がひそかに怖いのです。

 

田中兆子について

1964年富山県生まれ。8年間のOL生活を経て、現在は専業主婦。短編「べしみ」で、第10回「女による女のためのR‐18文学賞」の大賞を受賞する。『甘いお菓子は食べません』がデビュー作

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