お友だちからお願いします: 三浦しをん著のレビューです。
感想
「こちらこそ、お願いしたいです」と、言いたくなった!
図書館で司書さんに頼み事をしている間、本書を何気にパラッと読み始めたのだが・・・。「短くなった父」というタイトルにはやくも釘づけ。これは一体どういうことだろう?と、想像するも思いつかず、早速スルスルと読み進める。
そして、数分後・・・やってしまった!人前で声を出して笑ってしまったのだ。笑いで潤む目頭を押さえながら、無駄に咳払いなどしてみたが時すでに遅し。近くにいた人はこの薄気味悪い笑い声に気づいていたであろう。事前に本読み仲間の書評から、細心の注意を払っていたのにこの体たらくよ・・・。
問題の「短くなった父」とは、正確には「髪が短くなった父」なんですが、タイトルのつけ方も上手いですよね。このエッセイ内での親子のやり取りが面白く、最初はにやけていたのですが、「ソフトモリカン」のくだりで堪え切れず上記の事態に陥ったのです。
しをんさんのエッセイで俄然面白いのはこれら家族の話。本書は様々な出来事をもとにつづられているのですが、ご家族が登場すると、私はかなり身を乗り出して読んでいたように思える。
お父さんは気の優しいちょっと天然系。お母さんは結構毒舌で、いびきまでもが面白い方。そして、大晦日に湯気が出るほど自転車を漕ぐ弟。
みんな本当にいい味を出している。
何事にも動じなかったおばあちゃんは亡くなってしまったけれども、わずかなエピソードからも楽しい方だったのだなぁーということが窺える。
旅の話もたくさんあったけれども、しをんさん自身がインドアな方のようなので、旅先より家の中、現実より妄想の話の方がやっぱり面白いと感じました。
家族に意地悪な突っ込みを入れたり、「ごらぁー」と怒りを表したり、片づけない部屋を嘆いたり、たまにホロリとくるような話もあったりと、次はどんな話が来るのか?と、最後までワクワクさせてもらいました。
しをんさんの作品はほんのわずかしか読んでいないけれども、エッセイや対談だけで、すっかりファンになってしまいました。
お友だちだったらどんなに楽しいことだろう。本のタイトルを眺めながら「こちらこそ、お願いしたいです」と張り切って志願したいと切に思った次第です。