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【レビュー・感想】『痴人の愛』を歩く: 樫原辰郎

 

 

 『痴人の愛』を歩く: 樫原辰郎著のレビューです。

『痴人の愛』を歩く

『痴人の愛』を歩く

  • 作者:樫原 辰郎
  • 発売日: 2016/03/12
  • メディア: 単行本
 

感想・あらすじ

あっちこっち話は脱線するけれど、作者の谷崎文学への想いがめちゃめちゃ熱い!

 

「痴人の愛」━このタイトルを目にするたびに、この小説を読み終えた時の何とも言えない自分のテンションの高さを思い出す。

 

谷崎文学にハマる起爆剤になったとも言える「痴人の愛」は大好きな作品のひとつ。そんな作品の関連本と来れば絶対読まなくちゃ!と、発売前からギラついた気持ちで待ち構えていました。

 

感想を簡潔に言うとしたら、かなりマニアック!
ものすごく作品を掘り下げてゆくので、「散歩感覚」で作品の足あとを辿る的な読み物を想像していた私が気楽に読めたのは前半だけで、あとは深い深い世界にいざなわれ、抜け出せないとこまで連れて行かれた。

 

 

 

 

浅草からはじまる話は、当時の地図を丁寧に辿るように歩いている感覚でもうそれだけでもかなり楽しいわけだが、そこにナオミと譲治のエピソードや引用文からの分析がたっぷり語られて来るので1~3章あたりは、もう頭を本の中に突っ込んでしまいたくなるほど楽しめました。

 

特に「痴人の愛」のナオミと、樋口一葉の「たけくらべ」の美登利に関する考察は思わぬ共通点なんかもあり、なかなか興味深いものがあった。

 

谷崎が一葉や尾崎紅葉らを尊敬していたらしいなどの小話もちょいちょい出てくるわで、真相はともかく一つの作品が多面的に眺められるようになってくる。

 

筆者はこうして町を歩きながら目にするものを次々と繋げては話を広げてゆく。

 

先の一葉の話も著者は「樋口一葉記念館」の看板を歩いている途中で目にし、「痴人の愛」について調べているつもりだったが、一葉についても読み返す必要があると感じ電子書籍で再読し、二つの作品から見えたことを語っているという感じだ。

 

 

 

 

とにかく話がどこまでも広がってゆくので、後半はついてゆくのが結構ハードでした。特に谷崎と映画に関する部分は著者の得意分野ということもあり熱量が高く、非常に細かく分析されていているので、読む人が読めば相当面白い内容であるはずだ。

 

タイトルにある「歩く」というより、脱線につぐ脱線を経てエピローグに向かう。やぁー、横浜で遠かった(笑)

 

「痴人の愛」に魅了され続け、その想いをうんと溜め込んで、一気に本書で吐き出したのだな・・・という空気がものすごく感じられる一冊でありました。

 

もう最終的には「痴人の愛」が面白いのか、谷崎自体が面白いのか、脳内が麻痺した感じではあったけど、この混沌とした感じがまさに「痴人の愛」であり「谷崎潤一郎」であるんだな・・・と、無理にまとめてみました。