ねこじゃらしの野原: 安房直子著のレビューです。
「朝早くからおさわがせしてすみません」─ すずめやねずみ、木の精まで可愛いお客さんが次々とやって来る。
谷あいのまちにある、昔ながらのとうふ屋さん。
夫婦が営むこのお店には、様々な動物たちがやって来る。
すずめ、ねずみ、きつね、木の精、ねこ・・・・。
ラッパを吹いて自転車でとうふを売りにゆくと、
今度はこどもたちに囲まれ、不思議な出来事に出遭う。
6編のとうふ屋さんにまつわるお話は、
どれもこれもすっーっと惹きこまれるものばかり。
後半の話は、安房さんらしい不思議世界が繰り広げられ
幻想的な雰囲気で、少し怖かったり切なかったり。
もっと読みたいという気持ちを掻き立てる。
私がものすごく気に入ったのは、「すずめのおくりもの」と「
ねずみの福引き」。
「朝早くからおさわがせしてすみません」
・・・とやって来たすずめの軍団。
持参した小さな袋には、豆腐を作るだいずが入っています。
一体、なんのため?
このすずめたち。特別なお願いをとうふ屋さんに願い出ます。
とにかく、このずずめととうふ屋さんのやり取り(会話)が
微笑ましいったらありゃしない。
ずずめのリクエストに応えるとうふ屋さんの気持ちも嬉しいし、
その恩をちゃんと返すすずめたちの健気さがたまりません。
最後の一行に来て「くふっっ」って声が漏れてしまったほど、
とてもキュートなすずめたち。児童書ならではの世界に満たされます。
ねずみのお客さんは、とうふ屋さんに「耳よりな話」と言って
ねずみの福引き大会に誘いに来ます。
さっそく夜に出かけて行くとうふ屋さん。
そこで体験する数々の出来事がこれまた胸がいっぱいになるような風景で!
かつて飼っていたねこちゃんと再会する話なんかもあります。
しかもねこちゃん、(向こうの世界で)お仕事をしているんですが、
これまた可笑しいんです。一丁前に長靴を履いちゃって!(笑)
このとうふ屋さんが不思議なことを呼ぶお店なのか、
とうふ屋さん自身が呼んでいるのか、とにかくとうふ屋さんには
様々な不思議なことが起こります。
動物たちの世界、亡くなった子供たちなど、
向こうの世界と繋がっているような話もあり、
どの話も独特な世界観で印象深いです。
動物たちと出会う数々のシーンを胸にとてもとても満足な一冊でした。