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【レビュー】シンデレラの告白:櫻部由美子

 

 

シンデレラの告白:櫻部由美子著のレビューです。

 

シンデレラの告白

シンデレラの告白

  • 作者:櫻部由美子
  • 発売日: 2015/10/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

ずっと読んでいたくなる童話の雰囲気を持つミステリー!

 

はじめて読む作家さんだし、「ハズレ」でも仕方がないかな・・・なんてちょっと失礼な気持ちで読み始めたのですが、「ワタクシとんでもない愚か者でした。」と、丁寧にお詫びしたくなるほど、予想は大きく裏切られた。

 

冒頭から日本人作家の小説という雰囲気がなく、まるで西洋文学を読んでいる感覚がしたものだから、何度か作家名を確認しちゃいました(笑)

 

童話、ミステリー、サスペンスと、いろんな要素がふんだんに盛り込まれていて、一度本を開いてしまうと一気に時間が過ぎているといった感じで楽しめます。

 

 

 

15世紀末、各地では魔女裁判が行われていた中世ヨーロッパ。
美しい未亡人である母と、父親似で「ハイデンの鬼姉妹」と呼ばれてしまうほどの器量の悪い姉妹は、母親の再婚を機に大都市・ルテシアで暮らすことになる。

 

夫になる男性は謎めいた絹織物商で、12歳になる病弱の娘が一人いる。娘の病状は深刻で、残り少ない命だという。

 

姉はドレスの仕立て人、妹は食糧調達人として日々忙しく動き回り、母親は献身的に病気の娘の世話をする。

 

本家「シンデレラ」と似たような家族構成ではありますが、この一家には「陰湿」なムードは皆無なんです。読者的には「あれ?なにか起こらないのか?」と、ついつい先回りしそうになるのだが、この家族の「外」がなにやら騒がしい・・・。

 

社交界ではシンデレラを名乗る美女が居るという噂があり・・・・。
やがて貴族の不審死が重なることによって、一気に謎めいた世界へと話は広がってゆく。一体、なにが起きているのか?

 

かぼちゃの馬車、仮面舞踏会、ガラスの靴等々、シンデレラを彷彿させられる言葉があちこちに登場するが、物語自体はまったくのオリジナル。構想がよく練られ、変化に富んだ奥深い内容だと思います。また、何といっても二人の姉妹のキャラクターがとても

魅力的に描かれていて、重苦しい場面もカラッとした空気を運んでくれている。

 

ミステリーはちょっと苦手なんだけれど、こういう作品ならずっと読んでいられそう!かなり好みの物語でした。

 

童話、中世ヨーロッパ、社交界、貴族、舞踏会、病弱の少女、結ばれぬ運命など、ピンと来るものがあれば強くお薦めいたします!!

 

本書は「第7回角川春樹小説賞受賞作」とのこと。この賞のことはよく知りませんでしたが、ってことは、これデビュー作なんですよね?いやぁ・・・ホント驚きです。

 

次も迷わず読みたい!と思わされる作家がまた一人。
「豊作、豊作!」と、ひと仕事終えたような満足感が今ここに。