だから荒野 :桐野夏生著のレビューです。
感想:読み終わってもなお荒野
どうしたことか、桐野さんのダークな色が足りない!満足感がいま一歩得られなかった。残念。もっと胃がひっくり返るようなドロンとした感じの桐野作品が好きなのですが、今回のストーリーは、あくまでも主婦の逃避行といった域にとどまり、可もなく不可もなく、非常にお行儀よく収まっているだけに、もうひとひねり欲しかったなぁ…というのが正直な感想。でも、共感できる方も一杯いらっしゃる作品であることも確か。
内容は夫、息子たちに自分の存在を軽く見られ、失望・鬱憤が蓄積し、一気に何もかも投げ打って、西へ西へと車を走らせる46歳の主婦の話。
本書に出てくる夫はもうなんていうか…嫌な人としか言いようがないんだけど、私が注目したのは母親と息子の関係。息子たちは、母親を軽んじ、酷い言葉をぶつけたり、ゲームばかりしていたりと、呆れる場面が多いのだけど、「まだ、こんな感じの子も健在なんだ」と。
思春期の子供の親に対する感情の表わし方はいろいろあると思うけど、最近は反抗期すらない子もいると言うじゃないですか。お友達みたいな関係の母と息子が多いらしいですよね。「積み木くずし」みたいに暴れてた子供が多かった時代はもう遠い昔なんですねぇ。
そういう意味で、まぁちょっと度が過ぎる感じはあるけれど、成長過程のひとつだと捉えることもできる息子たちに対し、問題は夫。この夫に期待できるものはまるでないという絶望感がぬぐえない。
後半は移動中でのハプニングや、出会った人との日々の話になるのだけど、なんとなく切れ味の悪い展開に感じられる。しかも、ラストはあっけなく平凡に終わる。
だから・・・終わってもなお私の中に「荒野」は広がっていました。(タイトルまんまですねぇ)
「家族との距離感」が確かテーマの作品だったと思うのですが、どうだろう…。ちょっとメッセージ的には弱かったかな。
書評を書きながら気づいたのですけど、417ページもあったのか…と。驚くのはこのページ数を全く感じさせない圧倒的な読みやすさだ。ボリュームがどんなにあっても、あっという間に感じさせる「駆け抜ける感」が強い作品が多いのも桐野さんの魅力のひとつだと改めて思う。
けど、もっとワサワサしたい。蠢きたい。読者としてのわがままな願いは続く。






