天使の柩 (天使の卵) :村山由佳著のレビューです。
出会いの「縁(えにし)」を感じずにはいられません
「天使の卵」「天使の梯子」そして「ヘヴンリー・ブルー」を読んだのは何年前なのか?もう思い出せないくらい昔のことだったので、本書「天使の柩」が発売になると知っても、これがあの天使シリーズの最終章だということにしばらく気がつかなかったという。なので、続きが読めると知ったときは嬉しかったなぁ。
やはりシリーズものなので、前作を知っていたほうがより面白く感じられる作品です。
当時の様子が事細かに描かれているわけではないのですが、歩太や、春妃、夏姫などの登場人物の懐かしい名前が登場するたびに、同級生と久しぶりに再会したようなまぶしい気分でいっぱいに。
「あんなこともあったね。こんなことで傷ついたね」と、過去の恋愛を一緒に振り返る感じは、シリーズをともに歩いた者のみが知れる快感なのかもしれません。
歩太はなんと34歳になっていました。春妃との悲しい別れからいまだ立ち直れず、好きな絵を描きながら静かな生活をしています。
今回の話は当然、前作登場した人々が中心の話になるのかと思っていたのですが、実は新しい人物が中心に進むストーリーになっています。14歳の茉莉という少女との出会いを通して、歩太の現在の様子を知って行くという流れ。
茉莉は家族に恵まれず、学校でも居場所がないという少女で、自分を愛すこともできず、荒んだ生活を送っているという痛々しい子。
そんな茉莉の前に現れるのが歩太。茉莉が心から救われていくように、歩太もまた過去の出来事から解放されてゆく。
茉莉にとって歩太の存在は大きな心の拠り所になっていくのだが、様々な問題があってなかなかもどかしい展開に…。
「二人は結ばれる運命だったんだよ。」なんて照れくさい言葉があるけど、この二人もそうだなぁ…。
いや、二人が恋愛するとか、結婚するとかではなく、その時々で人は出会うべくして出会うものなんだなぁと。出会いの「縁(えにし)」を感じずにはいられませんでした。
小説だし、実存する人物でもないのにね。それなのに「運命」を感じさせられる糸が小説から感じられるところがなんだかすごい。
歩太はようやく長いトンネルから抜け出せたのだと思う。これから描く絵が彩り豊かで、たくさんの光に満ちていますようにと、思わず願ってしまいました。
登場人物たち、作者の村山さん、そして読者。全ての人々がこの小説の過去を柩に納め、新しい扉をまたひとつ開ける時が来た。─────そんな余韻が残った最終章だった。
なんだろう・・・清々しいのだけど、ちょっと淋しい。同級生の結婚披露宴の帰り路のような気分で読み終えました。





