二重生活:小池真理子著のレビューです。
尾行されていた!しかも、ご近所さんに…。
大学院生25歳の珠は、大学の講義でフランスのアーティスト、ソフィ・カルの「文学的・哲学的尾行」に触れる。これは一体どういうことなのかと興味を持つようになる。
そして、ある日、たまたま見かけた近所に住む出版社に勤める妻子持ちの石坂を尾行してしまうことから、話が展開して行きます。
この男性はそう、浮気してるんです。
愛人に見せる顔と家庭での男の姿など、小池さんにかかると本当に自分までもがコソコソその様子を覗き見している気分になり、「やだ、あたしったら…ちょっとこの状況、楽しんじゃってるし…」と思いつつ全く読む手が止まりません。
しかし、そんな私のような好奇心いっぱいの読者をよそに、珠は、黙々とソフィ・カルの言う「特に目的を持たない尾行」を進めていくのです。
尾行をしながら、珠自身も恋人に対する疑惑、不安、嫉妬を重ねて行く。
ストーカーと紙一重的な部分はあるのですが、なんの関心もない相手への尾行であるので、不気味さや怖さはあまり感じないのですが、一体、この話はどこへ行き着くのか…この部分がずっと気になるのです。
私はこのソフィ・カルという人物を知らなかったのですがパリで見かけた人をヴェネツィアまで追いかけて行くほどの尾行癖があるとのこと。世の中には本当いろんな人が居るものだ。
「本当の話」に収録されている「ヴェネツィア組曲」「尾行」「本当の話」の3編はこの小説のソフィ・カルの関連本で面白そうです。
人には言えない秘密を、知らないうちに、知らないだれかに、ひっそり尾行され観察されている…ある意味、尾行した者、される者、秘密を知った瞬間から共犯者なのかもしれない。明日から、ちょっと後ろを振り向きながら歩いてしまいそう…





