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【レビュー】臣女: 吉村萬壱

 

 臣女: 吉村萬壱著のレビューです。

臣女

臣女

 

 

妻がどこまでも巨大化してゆく・・・

 

羽田圭介さんが、テレビでお薦めしていたので読んでみたが、ん~これはまたかなり個性的な作品です。

 

主人公は高校の非常勤教師のかたわら小説を書いている男。
彼は教え子と結婚しているが浮気をしてしまう。

 

因果関係は不明だが、その頃から妻が巨大化してゆく。
骨をきしませ、痛みに苦しみながら、日に日に大きくなる妻。
やがて大きくなりすぎて外に出ることはおろか、自力でトイレへ行くことすらもできなくなる。しかも、体が大きくなると食べる量も半端じゃない。

 

排泄の世話から、大量の食の確保まで、夫は浮気の罪悪感もあり、献身的に妻の介護をするようになる。

 

家が汚物まみれになり、臭いも酷い状況になるなど、生々しく描写されていてる。やがて、近所の人々も異臭に気付き、何度も苦情を言いに来たり、彼の同僚や母親も訪ねて来ては「なにかある」と疑いの目を向けるようになる。誰かに干渉されればされるほど、ますます妻のことを隠そうとする夫。生活は転がるように崩壊へと向かう。

 

妻はついに4メートルを超え、いよいよどうにかしなければという追い詰められた状況へと発展し、彼は妻と二人で家から脱出しようと試みるのだが、巨大化した妻を外に連れ出すだけでも大変なわけで、あれこれ緊張を強いられるシーンが続く。

 

すごくシュールで、ホラーっぽいものを感じたり、孤独な介護生活をうんと形を変えて表現したもののようにも思える。また最終的には純愛小説とも・・・。

 

妻の細かい心情はほとんど語れていないので、一体どんな人物であったのか、分からないまま話は進むのだが、ラストに来て妻のことを知り、断片的ではあるが、色々な場面が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。それがなんとも切なくて。

 

また、ひとりで問題を抱え込んでしまうという、介護の現場で起きる悲痛な事件と共通するものも感じずにはいられません。

 

・・・と、ひとつに括れない奥深い小説であるのです。

 

いやぁ・・それにしても奇想天外な設定です。最初はちょっと不気味な小説を読んでいる感じでしたが、徐々に「えらいことになって来た・・・」と、私までもが余裕がなくなってゆく感じでした。

 

決して気持ちのいい作品とは言えない。強烈な印象を残す、ぶっ飛んだ1冊ではないだろうか。