もう年はとれない:ダニエル・フリードマン著のレビューです。
87歳の元殺人課刑事バック・シャッツ、まだまだイケる!
老人がある事件に乗り出すということで、ヨボヨボした
おじいちゃんのおとぼけ度満載のコメディタッチの
作品であるのかと思っていたら、意外にもしっかりした
ミステリーだったので、個人的にはあたふた。←ミステリー苦手
「金の延べ棒を探せ!」と言った感じで、
87歳の元殺人課刑事バック・シャッツと
大学生の孫のコンビでその行方を追う。
その金の延べ棒とは、捕虜収容所時代にユダヤ人のバックを
痛めつけたナチスの将校が大量に持っている言う。
しかもその将校がまだ生きているとの情報を言い残した
戦友の話から、バックの血が騒ぐ。
この話は本当のことなのかと。
「金の延べ棒」という財宝があると嗅ぎつけた様々な人々が
この行方を追い、やがて、殺人事件も次々起こり始め・・・・。
当然87歳のおじいちゃんがやることには、肉体的にも
さまざまな制限がかかるわけだけれども、皮肉屋ゆえに、
口は達者だし、現役時代を彷彿させる職業的勘など、
見せ場も多い。
ただし、ITの力を駆使する孫との会話は噛み合わず、
そのあたりのやり取りが面白い。
認知症も始まっていて、覚書のようなものが作中に
書き綴られている。
熱血刑事であったと思われる部分や、家族への愛情深さを
感じさせられる部分から、ジャックの人柄が伺える。
なかなか憎めない爺さんの圧倒的なキャラが魅力な作品であります。
◆最後まで銃社会を感じてしまい・・・
本書の山場を読みながら改めてアメリカと言う国は
銃社会なのだなぁと感じさせられた。
もちろんバックにとって職業柄、必要なものであったわけだが、
引退した爺さんが入院先にも銃を持ち込み、
それを手離さずにいたということに愕然とした。
いや、小説なのだけど・・・。
ということで、「最高に格好いい主人公」という宣伝文句も
あったけれども、つまるところ、自分には合わなかったのかな~
という思いが残る。
銃社会をまざまざと見せられたような印象が色濃く
残ってしまった。
本当は余計なことを考えず、どっぷりミステリーに浸るのが
よろしい小説ではあるんだけれどもね。