秋の牢獄:恒川光太郎著のレビューです。
毎日同じ日が繰り返される世界に迷い込み・・・
あ~もう今日が終わらなければいいのに!
あ~早く今日が終わってくれればいいのに!
今までどっちが多かったかな・・・。と、
答えが出そうにないことを考えてしまう。
永遠に終わらない日というものがあったら、
もちろん前者を選ぶだろうけど、そんな毎日の
繰り返しだったら自分はどうなるのだろう?
本書はある女子大生が11月7日水曜日という日を
何度も何度もずっと繰り返していると言う
その日に閉じ込められてしまったような話。
一晩寝て起きると、昨日と同じ日がはじまる。
学食で友達と話す内容も、食べているものも全て昨日と同じ。
幸いこの主人公のその日は、平穏な日だったわけだが、
これが最悪の一日だったらと思うとコワイですよねぇ。
しかし、この話の面白いところは、何をしたって、
一晩過ぎれば全てなかったことになる。
喧嘩したって、人を殺したって。
こうなると人はどんな行動を起こすのか?
やがて彼女は同じような現象の中にいる人々と出会う。
そして謎の北風伯爵の存在がまたまた深い謎を呼び起こす。
果たして、この1日の出口はあるのだろうか?
恒川さんの作品は、自然にぽっかり空いた空間に
気づいたら迷い込んでしまっているようなものが多い。
今回もその空間を登場人物たちと一緒に旅してきた
ような気分でした。
さて、冒頭の自分への問いかけですが、
本書を読んで思ったのは同じ繰り返すなら、
すごく楽しい日でも、すごくしんどい日でもなく、
案外、普通の一日が一番だと感じました。