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【レビュー】伴侶の偏差値:深沢潮

 

 

 伴侶の偏差値:深沢潮著のレビューです。

伴侶の偏差値

伴侶の偏差値

  • 作者:深沢 潮
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 単行本
 

 

女友だちへ向ける目がリアル

 

「ハンサラン 愛する人びと」が面白かったので、深沢さんの作品を制覇したい意欲が!

 

深沢さんの描く人間模様は決して温和な関係ばかりではなく、人間の持つ嫌な部分、意地悪な部分なども露出されていて、心の闇を覗くような感覚がもてる作品であるなーと感じる。

 

「伴侶の偏差値」というタイトルから、妻が夫のランク付けをするという意地悪な話なのかと思っていたが、実は夫を評価する類のものではなく、女性の内面を掘り下げてゆく小説であります。

 

35歳、独身の真紀は母とふたり暮らし。大学時代の友達佳乃は子育てに忙しく夫の家族と同居。未央は離婚後も仕事も恋愛も自由な生活をしている。

 

真紀はこの女友達のリア充ぶりを観察しつつ、自分の現状と比較する。このあたりの真紀の女友達へ向ける目が辛辣で・・というか、えげつないんですが、ガシガシ読んでしまうのですな、これが。

 

蔑んだり、羨ましく思ったり・・・普通にカフェで会話しているが、女友達へ向ける真紀の感情は、天気のようにコロコロ変化しながら自分はどこへ向かって行くのか模索する。

 

真紀は不誠実な嫌な男との付き合いも止められず日々を過ごしているのだが、やがて震災が起こり状況も変化してゆく。

 

 

 

 

30代女性の様々なパターンがこの本には詰まっている。独身、既婚、離婚歴あり、と、みんな自分で選んできた道ではあるけれど、自分と違う道を歩む友だちの状況が気になり意識してしまう。「自分は自分」と割り切れないものがくすぶっている微妙な年代だ。

 

本書はそんな苛立ちや不安が如実に描かれ、どんどん深みにはまってゆく感じがむしろ面白い。

 

震災を境にパートナーとの関係性が変化したという話はよく聞く。結婚する人も多かったし、その反対に離婚した人も多かった。真紀もこの震災をきっかけに、付き合っていた男性との関係に疑問を抱き、やがて自分にとって必要なものを見出してゆく。彼女の見つけたものはいかに?

 

深沢さんも「女による女のためのR-18文学賞」を受賞されている作家さん。窪美澄さん、朝香式さん、彩瀬まるさん等、この文学賞と自分は相性がいい。

 

人間のちょっと痛い部分をツンツン突いてくる作品たち。深沢さんもきっとそんな世界をこれからも描くのではないかと感じています。今後も注目してゆこうと思う。

 

文庫版はこちら。