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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】だれかの木琴:井上荒野

 

 

だれかの木琴:井上荒野著のレビューです。

だれかの木琴

だれかの木琴

  • 作者:井上 荒野
  • 発売日: 2011/12/09
  • メディア: 単行本
 

 

彼女のなかで一体なにが起こっているのか?

 

誰かのことが熱狂的に好きだとか、一向に振り向いてくれない相手にどうにかして
自分の存在をアピールしたい…などから、非常識な行き過ぎた行動をしてしまうのが、
いわゆるストーカーと言うものだと思っていました。

 

この小説はストーカーの話なのですが、私がイメージしていたタイプのものと違って、
別の意味でちょっと怖いと感じました。

 

引越しした新しい街の美容院にはじめて訪れる普通の主婦。「また来て下さい」という営業メールを送る美容師。このメールに返信したことから、主婦の行動がどんどん豹変していきます。

 

ターゲットになってしまった男性美容師、やがてこの主婦の異様な行動に気づき、
笑っていられない状況になるのです。

 

しかし、この主婦、特別この美容師を好きになったというムードでもなく、なんでこんなことをしているのか自分でも分からないという様子。そして読者にも「何でだろう?」という気持ちを最後まで抱かせたまま静かに進んでいくという曖昧な怖さがありました。

 

 

 

 

何がきっかけで陥るか解らない得体の知れないもの

 

そんな風になるわけがない、私は大丈夫…と、自分で思っていても、ちょっとした淋しさやストレスがきっかけで起こり得る世界もあるということをこの本で再確認させられた気がします。

 

平凡な生活の中に、じんわり迫ってくる正体のない魔の実体は一体なんでしょうか?

メールの音は今もなお、どこかで鳴り響いているはずです。

 

 ※2012年、レビューを始めた時に書いたものです。 今回、本作が映画化されるとのことで引っ張り出して来ました。

 

文庫版はこちら

映画化