昔日の客:関口良雄著のレビューです。
感想:この本の佇まいを感じて欲しい
祖父の本棚にはこれに似たようなシンプルな本がたくさんあったな…。
鶯色の布張り装丁と、味のある筆跡で書かれた題字。
はじめて読む本なのに、懐かしい感じがしたのは、子供時代に見たあの本たちに似ていたからかな…。
装丁の美しさ…最近の本にない、落ち着きと品が漂っている。
何度見ても飽きないこの感じは何だろう…。
関口良雄
東京大森にあった古書店「山王書房」の店主。
1918(大正7)年、長野県飯田市に生まれる。
還暦間近で亡くなる。
関口さんの古本屋さんに訪れるお客さんとの温かい交流を描いたエッセイです。
こういう本に出会うと、本当に読書をし続けて良かったとつくづく思う。
内容の素晴らしさだけではなく、作者の本に対する愛情の深さ。
作者の想いを引き継ぐ家族の力。
復刊を熱望した、読者達の熱い想い。
そして、それを実現させた「夏葉社」という素晴らしい出版社。
全ての想いがこの1冊にはあります。
「あとがき」と「復刊に際して」という部分で思わず涙しましたよ。
私は店を閉めたあとの、電灯を消した暗い土間の椅子に座り、商売ものの古本がぎっしりとつまった棚をながめるのが好きである。
毎日毎日、本に囲まれての生活。それでも、一日の最後に本を眺めるこの心の余裕と本に対する愛情が伺える一文にジーンと来る。
店主の本好きだけでなく、そこへ来る本好きなお客さん達のエピソードもたくさん登場します。
また、伊藤整氏になりすましたとてもお茶目な話や、ご家族との話。
何気に登場する、大物作家との交流などがほのぼの描かれています。
文章がうるさくなく、どんなに読んでも疲れない。
印刷した文字なのに、万年筆で書かれた文字の文章を読んでいる気さえしてくるのは不思議な感覚でした。
そして、この本の持つ佇まいが何よりも気に入りました。
この本は又吉さんの本から知りました(笑)どこかの古本屋さんで会ったら、お礼を言いたいな。