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【レビュー】安閑園の食卓 私の台南物語:辛永清

 

 安閑園の食卓 私の台南物語:辛永清著のレビューです。

安閑園の食卓 私の台南物語 (集英社文庫)

安閑園の食卓 私の台南物語 (集英社文庫)

 

 

台湾の大家族とダイナミックな料理の数々

 

故郷でもない。
この時代の人でもない。
大家族で育ったわけでもない。

なのに、なんでこんなにも懐かしい気分になれるのかな~。
・・・と、思ってしまうちょっと不思議な本。

 

時代は1930年代。
台南の郊外の広大な敷地にたたずむ「安閑園」。
筆者はこの地で大家族とともにのびのびとした子供時代を過ごす。

 

「食」を綴ったエッセイではあるが、当時の中国の風習や季節の行事、人々の生活ぶりがかなり細かく記されていて、終始「なるほど」「へぇー」「すごーい」の連続で、新鮮な驚きがたくさんあった。

 

辛さんの一家はかなり裕福な家庭である。
お父様は実業家、政治家、学校教育にも力を注いだ方。
顔も広く、家での豪華なパーティーなど「あっぱれ」なシーンも少なくない。

 

例えば「安閑園」の台所はおよそ20畳。
夕食を迎える6時の2時間前から、たくさんの使用人たちが料理に取りかかる。その様子はホテルやレストランの厨房を彷彿させられるようなにぎやかさ。中華鍋から沸き起こる音が聞こえてきそうな臨場感があります。

 

また作られる量もすごいが、食べるものも中華ならではの珍しいものが数多く登場する。豚や鶏の血液の料理なども、はじめはギョッとする響きだったが、調理の様子などを読んでいるうちに、かなり食べたくなってくる。

 

どの話もスケールの大きさを感じずにはいられないのだが、特に私が気に行った話は「宝石売りのおばあさん」の話。昔の台湾には、宝石を家に売りに来る商売があったのですね。頻繁ではなさそうですが、顔見知りになるくらいだから、お付き合いも長そうです。

 

日本で言う、「富山の薬売り」といった感じでしょうか。このおばあさん、各家庭を周っているだけに顔が広い。そこを活かし、宝石以外にもあるものを持ってやって来ます。なかなか興味深く面白く拝読。

 

 

 

とにかく読んで味わって!

 

冒頭書いた「懐かしい感覚」。
振り返ってみると、辛さんの描く風景があまりにも鮮明でいきいきしていたから、いつしか子供時代の辛さんと自分が一体化しちゃったんだろうな~。

 

日本で結婚し、離婚。子供を育てながら日本に住み続けた辛さんにとって故郷での思い出の日々は何よりもきっと大切なものであったのだろう。

 

すごく充実したエッセイです。料理研究家でもあった辛さん。
てっきり文筆業の方かと思ったほど文才のある方。
他にも読んでみたいと思ったのですが、レシピ本しかないようです。

 

この本は書評なんてあてになりません。
読んではじめて味わえる部分が非常に多いので、興味のあるかたは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、五感をフル活動させて読むことをお薦めいたします。