ビオレタ:寺地はるな著のレビューです。
感想:美しい箱を売る雑貨屋「ビオレタ」
とくに印象的な場面があるわけではないけれど、不思議なくらい自然にスルスルと読めてしまうのが、この筆者さんの特徴なのかな~。あまりガチャガチャしていない小説が持つ空気感が良かったのかもしれません。
「ビオレタ」とは、美しい箱を売る雑貨屋さんの名前。この箱は「棺桶」と呼ばれ、行き場のない思いや記憶を入れるという、ちょっと風変わりな箱なのです。
主人公は婚約者に別れを告げられボロボロになっている女性・妙。彼女は雨の日に大泣きしているところを、この雑貨屋の店主・菫に拾われる。ちょっとぶっきらぼうな菫ではあるが、自分の店で働かないかと妙を誘う。あまり深く考えずに妙はこの少し変わった店で働くことになった。
なにごとにも自信が持てなかった妙が、この店で働き、菫の周りの人々と関わるにつれ、霧が晴れて行くように徐々に変化してゆく。そこに至るまでは、ぐずぐず、じめじめしてしまうのだけれども。
決して能動的に動くわけではなく、あくまでも自然に起こることに身を任せることによって居場所を見つけてゆくような女性なので、個人的にはちょっともどかしいなーと思うシーンもチラホラあったけど、こういう生き方もまたありなのだと思わされる。
まぁ、いろいろ成長するきっかけはあるのだけれど、やはり妙を変えたのは、両親の温かい言葉と新しい恋なんだな。私は妙のご両親がとても好き。特にお父さん、静かな優しさが胸に染みる。
ただ、お店にまつわる話が薄いかな。せっかくおもしろいお店屋さんの設定なのに。あともう少し何かを・・・と、読者としては求めてしまいますが、読めばきっと「寺地はるか」という作家の次作が気になるはず。
毎日サプリを飲んでいるとなんとなく効いて来たかも?と、思う瞬間があるけど、そんな雰囲気の小説であると思う。急激に強くなるとか、元気になるとか、そういうものでは決してないけれど、あとになって少しだけ変わった自分に気づけるような・・・。
そんな小さな力が裡から生まれてくるような小説なのだと思う。





