マイストーリー:林真理子著のレビューです。
自費出版業界の世界が覗ける小説
久々に読む林さんの長編小説。
朝日新聞に連載されていたのは知っていたのですが、
毎日小出しに読む作業が苦手なもので、書籍化されたら
一気に読もうと思っていました。
出版社の話は小説として結構書かれて来たように思うのですが、
「自費出版」という域に切り込んできた方はいないのでは
ないだろうか。
今回そこにメスを入れた林さん。
マイストーリーは、自費出版の編集者と本を出したいと
思っている人々をさまざまな角度から描いた小説。
自費出版された本というものがどのように作られているのか、
いかに普通の出版と異なるものであるかというのが解る。
また、どんな人が自費出版を願い出るのかといった部分も
興味深いところである。
ゴーストライターとか、部数・印税とか、テレビドラマ化
等々・・・結構生々しい話も登場する。
後半は嫌な女の登場により人間関係に焦点をあてる
と、前半は様々な葛藤を経て出版されてゆく本と人間関係が
描かれているのですが、後半、編集者の太田が、「夫のことを本にしたい」と言ってきた女性の担当になったことから、どんどん
ドロドロした人間模様が展開され、「あーキタ、林さんの世界」
といった雰囲気へ。この未亡人がなんとも強かで。綺麗な容姿、
弱くて守ってあげなきゃと思わせる女。
そして、本がドラマ化されることが決定し、彼女はどんどん注目を浴びる。しかし、彼女には驚くべき過去が・・・。
女性たちは本能的に「この女は近づいたら、あかん」と感ずいているが、男性にはそれが見えない・・・の典型のようなパターンで大田も漏れなくコロっていっちゃうんだな、これが。
よってボロボロにされちゃう・・・という展開へ。
このあたりのイヤ~な感じがなんともね。
女を敵に回す女を描くのが上手いです(笑)
結局、後半は出版社の話だけではなく、嫌な人間関が次々に露出。
それぞれの思惑にイライラしながら、まぁ、なんとか最後は
落ち着くところに落ち着いた感じだ。
自分の人生を本にしたいと考える高齢者が多いそうだ。
これから高齢者は増える一方。
自費出版社は自費出版社の役目があり、
需要はこれからも伸び続けるのではないか?
そんなこともふと考えさせられた小説でありました。