お初の繭:一路晃司著のレビューです。
感想・あらすじ
製糸場の工女たちの話ではあるのだが…
レビューを見ると評判があまり良いとは言えず迷ったのですが、「富岡日記」を読んだこともあり、製糸場の工女たちの話となれば読まずにはいられない。
仮に外してもまぁよしとしよう…という気持ちで借りてみました。
日本ホラー小説大賞受賞ということですが、「ええ?どういうこと?何が起こっているの?」というピークは後半部分のほんの数十ページだった。
しかし、製糸工場に奉公に出される女の子たちが地元から出発する時から、怖いというものとは別次元の不気味なムードはすでに始まっていた。読者もこの少女達と同じく不安を抱えたままこの製糸工場に足を踏み入れる。
そこで最初にしたことは屈辱的な身体検査。この結果により少女達はランク付けされ配属が決まるのである。
過酷な労働とか体罰とかも予想していたのですが、そのようなシーンはそれほど出て来るわけではない。しかし、食事ごとに飲まされる薬、日に日に変わって行く友達の姿、社長の息子の不審な動き…等々、なんか気になる要素をあちこちに散らし、モゾモゾした感じがなんとも気持ち悪く、結局、どんどんページをめくることになってしまった。
思春期の少女たちの無垢な身体をこういう形で扱ってしまうのは、いかがなものかと思う気持ちも確かにあり後味も悪い。
救われたのは「富岡日記」を読んでいたこと。 />本物の記録と小説と重なる部分と異なる部分の比較をしながらの読書は結構面白かったので、この世界が気になる方は「富岡日記」を前後に読むと良いかな…。
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