珍品堂主人:井伏鱒二著のレビューです。
珍品堂VS蘭々女
骨董を題材にした小説を探していて、辿りついたのがこの小説。
珍品堂と呼ばれている骨董好きの男が、実業家九谷士の広大な邸宅が空いているということを知り、そこで高級料理屋の経営を思い立ち動き出す。
承諾を受けた珍品堂は、食器から食料にいたるまで、得意な分野を活かし集めまくり、夢への一歩を踏み出すのだが、そこへ九谷の紹介で、やり手の蘭々女という女性が参入して来る。
料理屋自体は順調で、大阪に支店まで開くことになるのだが、やがて、蘭々女がのさばりはじめ、従業員を巻き込みながらドタバタ劇へと流れて行く。
この蘭々女という女性はそつがなく、見どころのある人物。そこへ珍品堂が挑んでいくという面白さ。それいけー!と、やんややんやと楽しんでしまう。
井伏鱒二の作品ははじめて読んだが、人間関係の微妙なやり取りを描くのが上手だな~と。しかも、大変読みやすいので、余計なことは考えずにズンズン読み進められる。
珍品堂が料理屋を始めて動くまでも早かったが、蘭々女との幕引きもわりとあっさり終わっている。このあたり粘着質に話を引っ張る作家が多い中、淡泊と言うかスパッとしていると言うか・・・。井伏鱒二の性格もあっさり系だったのでしょうか。
解説を読むと、細部にわたり読者を楽しませている
ポイントが散在していることが確認できる。
骨董は女と同じだ。
変なものを掴むようでなくちゃ、自分の鑑賞眼の発展はあり得ない。
骨董と女性を絡めるあたりがとても印象的だった。この「女」という部分を「男」にも置き換えてもいいのではないか?など、余計なことを考えてしまったわけだが(笑)
今回は面白くてどんどん読んでしまったが、次に読む井伏作品はじっくり読んでみたいものだ。