月夜見 増田 みず子著のレビューです。
継母と娘の淡々とした日常からみえてくるもの
なんと淡々とした日常なのだろう。それなのに、それだから?孤独というものの、
本質を覗いたような、深々とした気持ちになる小説であった。
作家である百々子は、87歳の継母・千代が入院したことから、彼女が経営するアパートの管理人を任されることになった。百々子の父親は30年前に他界しており、一時、千代と二人で生活をしたことがあるが、決して打ち解けることがない仲であった。
そんな関係であったが、千代が倒れたため、百々子は実家に戻り、アパートの管理をしながら千代の見舞いへたびたび訪れては、ポツリポツリと会話をする。
アパートの住人も謎が多く、家賃や修繕等々、なにかと問題も多いし、訪ねてくる近所の千代の知り合い女性の不審な感じなど、たまに邪悪な空気が流れ込み、「もしかしたら、なにか起こるかも?」という雰囲気もあり、静かにざわつくものが混じる。
また、亡くなった父親を感じたり、母親の生霊を感じたり、スピリチュアルなシーンも登場するが、不思議と言うより、百々子のなかにある「孤独」が「孤独」を呼び、いつしか幻想のなかに入りこんでしまったような…そんな深い深い「孤独」を感じずにはいられなかった。
千代との関係も、最後まで距離は縮まることもなく、だからと言って突き放すわけでもなく淡々と日々は続く。ふたりで握り飯をがむしゃらに食べるシーンは印象的だ。
深い孤独に向き合うような小説
継母という他人との関係が軸になった小説ではあるが、わたしには「寂しい」という言葉で片づけられないような深い孤独と向き合うような小説であったように思えた。決して女たちは「寂しさ」を大袈裟にアピールしてくるようなことは何ひとつないのだけれども。
ある人にとっては退屈極まりない小説に思えるかもしれない。つかみどころがないのでこの小説の良さを伝えるのは本当に難しい。しかしこういう雰囲気を醸し出す小説、結構好きなので、良い出合いになった作品でもあると言えます。





