五十坂家の百年:斉木香津著のレビューです。
ご先祖さまは人喰い!?
重々しいです、非常に。
最初に「○○家の家系図」的なものがあると、
「あー来たか」と思う。この本を手にしている間、
一族の長い歴史と向き合うことになるのかと。
【五十坂家の家系図】、目次の次に現れます。
そこで目に飛び込んできたのは、人数の多さではなく、
一番上の枠の元来なら名前が入るところに「人喰い」とある。
ご先祖様が、ひ・と・く・い?
うわぁ、、これはまたひとヒネリある。先が思いやられるなぁ・・・と、好奇心半分、憂鬱な気持ち半分でスタートする。
五十坂家のストーリーは双子の老姉妹が一緒に
飛び降り自殺したと言う、不穏なムードからはじまる。
葬儀に集まった五十坂家の一族が、老婆たちの謎の死と、
家に潜む不審な歴史を読み解いてゆくというかたちで進行する。
なにせこの屋敷、文化財に指定されるような古い武家屋敷。
祖先である「人喰い」が他人から横どりしたような屋敷で、
いわくつきなのだが、その屋敷を守って来たのが双子の姉妹なのだ。
この一族、皆が皆、どこか不審な雰囲気を纏っている。
一見普通に見えるが、どこか歪んでいる人々たちの
本性がなんなのか?知りたい気持ちが先走る。
そして、ゾッとするのがこの家の床下には4体の遺体が・・・。
一体なんのために?そして埋められた人物、埋めた人物は誰?
ただひたすら読まされる
過去を探って行く作業は、何層にも重なった歴史を掘り起こし、
ひとりひとりの状況を振り返ることにより明らかになって
ゆくのだが、なかなか到達点に至らず、悶々、イライラしながらも、
止めることも出来ず、後半は一気に!
歴史を行ったり来たり、家系図を行ったり来たりしながら、
徐々にひとつにまとまってゆく感じはなかなかだ。
斉木さんの作品は2冊目で、ひとつ前に読んだ作品と
作風は違うのだけれど、全く同じ読み心地がしたという、
不思議な作家さんだ。
誰にも共感出来ないのも変わらない。
わくわくする場面もあまりない。
感情移入させることもなく、ただひたすら読ませる・・・。
というあたりが、この作家さんの強みなんだろうなぁー。
はやくも新作が気になってしまう。