雲をつかむ少女:藤野恵美著のレビューです。
インターネット、今と昔を考える
インターネットが生活の一部になってから
もうどのくらい経つだろうか?
そんなことももう考えなくなってしまったほど、
遠い昔のようでもあり、つい最近のようでもあり。
どこかバーチャルな雰囲気があったネットの世界。
知らぬ人と繋がるということが何か特別な空間のように
思えたのも昔の話。
この本を読んでいると、ネットが広がり始めた
90年代と現在ではやはり繋がり方も随分と
変化したものだと感じる部分が多い。
ツイッター、フェイスブック、ブログ等々のSNSの
広がりがやはり人との距離がいい意味でも悪い意味でも
近くなった。
本書には8人の人々が登場し、個々のインターネットとの
関わり方が描かれている。
特に第3話は、常時接続でなかったころの
ネットの世界について描かれている。
おそらく若年層が知らない時代のインターネット。
「俺らの時代って、基本、書きこみは匿名…って
意識があるんだけど、最近の若いやつらって平気で本名を公開するよな。リスク意識、低すぎだろ」
確かにそう思う。
けど、それを逆手に取って面接を受けに来た学生の素行を検索して
調べるなんて話が登場しましたが、実際でもあるのかな?
ネット利用の仕方が、本当に時代とともに変わったのだなぁと、
感じずにはいられない。
ネット世界はどこか「行き過ぎ」という場所へ放り込まれることが多々ある。
本書ではそんな違和感に気づき、そこから一歩抜けるということの
選択肢があるということに気づかされる内容のものが多い。
自分の動画をアップして、褒められチヤホヤされ、
アイドル的快感を覚えてしまった少女。
オンラインゲームで課金してまでもゲームをする友だちを見て
違和感をもつ少年。
自分の成長をブログでずっと公開し続ける母親に対して
嫌悪感を持つ少女。
どの話も現実的であり、ネットの落とし穴がよく見える。
これだけ身近なものになり、ましてや生まれた時からそこに
インターネットがあった世代の子どもたちに、ネットとの
付き合い方を指導するのは難しい。
この本はいろいろなパターンを知ることができるので、
事例本として子どもたちに読ませるのにもいいかも知れない。
いや、子どもだけでなく、ネット依存しがちな大人も読んでみると
意外にも見えてくるものがある。
良いとか悪いとかの視点ではなく、使い方の方向性を
考えさせられます。
7,8話は舞台がアメリカへ移り、なかなか凝った
構成になっています。
軽いタッチで描かれていながらも、なかなかしっかりした内容の1冊!