赤いペン (文学の森):澤井美穂著のレビューです。
人間に何かを書かせて、消える赤いペン
表紙の女の子の表情から、怖い本なのか~と
思っていたのですが、特にゾクゾクするような話でもなく、
どちらかと言うと謎解きかな。
昔、言われませんでしたか?赤いペンで名前を
書いたらいけないって。
意味も解らず慎重になっていた子供時代。
だから余計にこの本のタイトルから怖いものを
想像しちゃったんですよね。
さて、この本の赤いペンとは?
夏野は中学二年生の少し引っ込み思案の女の子。
彼女の住む町には、人から人へ物語を紡ぎながら旅をするという
「赤いペン」の不思議なうわさが広がっていました。
ふと現れて、人間に何かを書かせて、消える赤いペン。
夏野はその謎を探ろうと、町の文学館へ足を運んでみます。
文学館のちはやさんや草刈さんをはじめ、様々な人々の証言を
辿ってゆくと、意外な人物に辿りつくのです。
ミステリータッチで、どんどん先を急ぎたくなる内容でありますが、
この物語のもうひとつの魅力は登場人物がみな個性的で楽しい。
見た目は女性の五郎さん。夏野に気があるクラスメートの春山。
人々の協力を得ながら、夏野も苦手だった人との
コミュニケーションが滑らかになりはじめる。
物語の展開は後半へゆくほど盛り上がる。
特に謎の作家の出現で、大きく話は動きはじめます。
さて、ペンに隠された秘密とは・・・。
本作は「ちゅうでん児童文学賞」の大賞作品だそうです。
作者の澤井さんご自身、半透明のきれいな赤いペンを手に入れ、
そこから、このペンを主人公にした話を書こうと思ったらしいのです。
まさに、赤いペンに物語を書かされたのですね。
このペンがこれからもたくさん良書を生んでくれますようにと、
次も期待しております。