かなと花ちゃん: 富安陽子著のレビューです。
人形の運命は持ち主の子ども次第
「盆まねき」が面白かったので、他の作品も気になり読んでみました。
久しぶりの「お人形さん」もの。
茉莉ちゃんという少女はある日おばあちゃんからお土産にとお人形をもらいます。
おばあちゃんはその人形に「花代」という名前と新しくこの人形に着物を縫ってくれました。
本書の導入部でなんとなくあの話に似ている…とピンとくるかたも多いと思います。
おばあさん、人形、そして、もらった少女はさほどその人形が気に入っていない。
とはいえ、ここからは本書ならでは話が展開されます。
人形にとって自分のお母さんになる子に初めて逢うときが一番緊張するもの…とあるのですが、確かにずっと寄り添ってもらえる人形とそうでない人形と、持ち主によって左右されちゃう部分がありますよね。まさに運命の分かれ目。
なかなか人形目線で考えることはなかったのですが、子供は容赦なく好き嫌いが出ますものね。その典型的な冒頭部。ある日、茉莉ちゃんはかくれんぼに夢中になり一緒に居た花代を放り出したままどこかへ行ってしまいます。
一週間経っても迎えに来てもらえず、心細くなっていた花代のもとに現れたもう一人の少女「かな」。
かなには何故か花代の話すことが分かります。
持ち主が見つかるまでということで花代を家に連れて帰り、ふたりの新しい生活が始まります。
さて、この二人が訪れる場所には数々な不思議な出来事が起こります。このあたりの不思議な話が「盆まねき」同様、不思議異空間の感じが満載で、みるみるうちに話に引き込まれていきます。
不思議な縁日、童子像を作ったおじいさんの幽霊、お菓子の家等々…。
そんな体験を繰り返す二人の間にはやがて友情が育ち心温まるラストを迎えます。
児童書なのに、やっぱり大人が読んでも楽しめてしまう作品。
特にかなが乳母車に花代をのせて移動するなど思わずニンマリしてしまう場面に遭遇したりと懐かしいポイントも嬉しい。ベビーカーじゃなく「乳母車」。こんなアイテム用語がなんだかホッとするムードにしてくれるんでしょうねぇ。
読後感が良いのでまたまた他の作品も読んで行こうと思います。